ムサビ長澤学長インタビュー!
「大学は失敗する場所」未来を思う全ての学生へ。
前編では長澤学長がそもそもなぜムサビに入学したかという話題から、美大って何をするところなのか、実は表現だけを学ぶのでない美大の姿をお聞きしました。後編では長澤学長の実践や、未来を思うすべての学生へメッセージをお伺いしました!
長澤忠徳さん
武蔵野美術大学学長。これまでに民間企業他地方自治体や政府のデザイン顧問、数々の展覧会プロデュースを行う他、デザインコンサルタント協会の設立や「デザイナーシップ」、「カルチュラル・エンジニアリング」などデザインの新たな概念の提唱者でもある。著書『インタンジブル・イラ』他多数。
プロフィール http://profile.musabi.ac.jp/page/NAGASAWA_Tadanori.html
デザインコンサルタントの道
奥の段階を考えるのは、コンサルティングのようですね。
僕は仕事をする中で、例えばお客さんの会社の組織のあり方に問題があったりとか、目の前の話以外に問題があることが多いなと感じて、「デザインコンサルタント」と名乗り始めました。最初は認知されるのに苦労したけど、日本デザインコンサルタント協会っていうの作ったり、色々と努力しましたね。
そしてそれを教育するとなると大学が、どのレベルや段階で教えていくかも重要です。だから色んな先生を揃えているわけですよ。僕みたいに考え方や根本的なことを喋る先生もいれば、技術的なことをバンバン鍛えてく先生もいます。
でも、美大にきたら絵の書き方は教えてくれないんですよ。それよりは、自分の考えてることをどう表すかとか、伝えるかとかそっちが大事。表現と考えることの両方をやってるからこその強みがあります。
美大ならではの美大発想とは
例えばあるものに対して、これはなんか違うみたいな単純な理由付けで終わりにするんじゃなく、こうすればもっといいのにという発想があって、だからこれはここが問題だって同時に出せる。色んな課題やる中である程度理想みたいなものがでてくるから。
—課題を発見することだけが目的じゃなくて、かたちに起こすところまでを完全に想定するところが面白いなと、今の話を聞いて思いました。世の中の課題発見って発見すればいいみたいなところがあるじゃないですか。アイデアを実際のかたちまでつなげてかたちにするところまでやれるのは、それこそ美大発想なのかもしれないですね。
そう。だからもう卒業制作くらいになるとみんなすごい。これは1ヶ月やそこらではできないですよ。やっぱり4年間繰り返しやっているやつは強い。
文句いわれながらも何度も考えているうちに自分の1つの問題からいくつも引き出しがでて、広がっていくんです。だからデザインは理解力が大事。
未来から今を考えるバックキャスティング。
僕はみんなが将来を考えるときの方法のひとつとして、バックキャスティングというのをおすすめしています。
過去から予測したら考えられないものだとしても、その理想通りになると仮定して今なにすべきかを考える。
私は手書きでイラストを売る!と設定したいとしたら、その時代を考えつつ今どうするべきかを考えなければならない。それがないと世の中に影響を与えにくくなるんじゃないかなと感じます。時代はどんどん変わる。
でも時代が進む分、反作用もあるから面白い。
日本はタイポライターがなかったから、キーボード文化がなかった。でもこれがいきなりコンピューターとかできてみんなキーボードで打つ様になった瞬間に人気になったのが、書道教室。文化は文明の抑止力になるから、そういう想定外の作用も面白いですね。
心の音を聞け!大学は失敗する場所。
迷ったときは心の音を聞くことが大事です。
例えばはなちゃん。美術が好きとか表現系にいきたい気持ちがあるとしたら、多分心の中で音がなってるの。それは意志があるから。意志の「意」は心の音って書くんだよ。
心の音はあなたにしか聞くことができない。人と生きていくには、それを体の外にださないといけない。言葉なのか、身体表現なのかはそれぞれだけど。なにかしら「はかりごと」をして出す。
はかりごとっていうのは「図」っていう字をかくよね。だから表現されたものには意図がある。
でもそれをどうしたらうまくできるかを考えるためにはありとあらゆる失敗を重ねるのが一番いい。それをやらしてくれるのが、大学。大学ってなんで行くかというと、失敗するために行くんですよ。
はな:心の音がわからなくてずっとどうしようもなかったらどうなるんですか?
大丈夫。そんなどうしようもないまま人間耐えられないから。
これはもう俺が約束する。人間ってね、考えて考えて考えて考えて、もう全部考えたら次なんかしてるよ。無理してすごいことをしなくても、風景が変わると変化が生まれて刺激になる。そしたら音が鳴り始めたりするの。
信じ続けること。水平線を追いかけろ。
まゆ:表現するときに、迷うんですよ。軸がないなあ、と。
僕は軸なんてないよ。ひたすら信じるのみ。僕は水平線を信じている。僕は田舎に帰る新幹線の中であぁ~水平線ってまっすぐだなあ、すごいなあと思い初めて、そこから水平線の上に立つということを信じ始めた。理屈でいうと立てるわけないんだけど、でも自分がすごいと感じるものを信じれるかどうかだけだと思いますよ。困難があっても、信じ続けるの。
ありがとうございました!
心の音をきくこと、信じ続けること、そして時代を生き抜くための未来への考え方。
指針にしたくなるような考え方をたくさんきくことができました。長澤学長、貴重なお時間をありがとうございました!
この記事を読んで新しい発見がひとつでもあれば、とても嬉しいです。どんな中高生も大学生も、進もうとしてるときはみな同じ。この記事が誰かが誰かとつながるきっかけとなりますように。
前編はこちら!http://seishun.style/shigoto/2269/
—————————————————————
【平成29年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展】
▶開催期間:2018年1月18日(木)〜1月21日(日)
▶開館時間:9:00〜17:00
▶会場:武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス
—————————————————————