【前編】Family History Lab. @SFC 「話し手が主役のインタビューとは?」

2016年7月29日

今回の編集やライティング、インタビューなど編集部員として必要な スキルを紐解き学んでいくシリーズでは、慶応義塾大学総合政策学部 (通称SFC)の清水唯一朗先生と、研究会の学生たちと、「インタビュー」について学びました。
日本政治外交を専門に研究している清水先生は、研究方法として長く「オーラルヒストリー」と呼ばれるインタビュー法を実践しています。これはインタビューを使った研究方法として磨かれてきたものだそう。
 
後編はこちら>>【後編】Family History Lab.@SFC 「質問は『共通点を見つけたい』というサイン」
 
profile
 
清水唯一朗先生
慶應義塾大学総合政策学部准教授。‘99年に慶應義塾大学法学部政治学科を卒業し、政策研究大学院大学、東京大学でオーラルヒストリープ ロジェクトに携わる。’07よりSFCで教鞭をとり、多様な学生を輩出 してきた。’14年に米・ハーバード大へ留学、’15年には台湾・国立政治大学で客員准教授を務める。専門は日本政治外交、オーラルヒストリー。博士(法学)。
 

オーラルヒストリーに、入門!

 
ワークショップには、青春基地の中高生編集部だけでなく、インタビュー初挑戦の高校生など、経験はまちまちな参加者たちが集まりまし た。どうしたらより良いインタビューができるのか、みんなで考えてみました!
さっそく、始まりました!
 
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廣川(学生):こんにちは!4年の廣川です。さて、みなさんはインタビューに対してどんなイメージがありますか?
 
参加者:記者会見とか…?
 

廣川:

なるほど、それも 1 つの種類ですね! 「インタビュー」と一口に言ってもいろいろな種類があります。
でも、噛み砕いてしまえば「話を聞くこと」それ以上でもそれ以下でもないんです。 今日は、「話を聴く」という日常的にやっている当たり前のことについて、それが「一体どういうことなのかな?」と、皆で一緒に考えていければと思います。今日は皆さんにもインタビューをやってもら いますよ!
 
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清水先生:

こんにちは、清水です。 みなさんは生まれてきた時、どうやって生まれてきましたか? それを知っている人はこの中にどれだけいるでしょう?
 
それぞれの家族にはそれぞれの歴史があります。そして皆さん自身に も一人ひとりの歴史があります。今回は「オーラルヒストリー」を通じて、一人ひとりの歴史に迫ってみたいと思います。今日の経験を踏まえて、みなさんには、一番身近な存在である「家族」に対 して実際にインタビューを行ってもらいます。インタビューを通じて、知らなかった家族の一面を知ってもらう機会になればと思います。
 

ずばり教える!インタビューの4つのコツとは。

 
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伊賀:

伊賀です~。みなさんにもインタビューをしてもらうのですが、 その前に、私たちが考えているインタビューの<コツ>みたいなものを 授けたいと思います。
ずばり私たちが思う、インタビューのコツは4つ
1)相手の話に答えること
2)出てきたキーワードを掘り下げること
3)開かれた質問・閉じた質問を有効活用すること
4)オウム返し、この4つです。
 
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例えば、相手のためになっているか不安になったときに相手がうなずいたりしてくれると安心できますよね?
 

清水:

話している時、「まだ話している途中なのに、次の話題にいっちゃった」とか「ここもっと話したかったのに先に行っちゃった」とか そういう感覚がありませんでしたか? 「逆にすごく話しやすい」「この人が相手だとどんどん話しちゃうのは なんでだろう」っていうこともあるはずです。
それを細かく見ていくと、頷きだったり、目線をくれていたり、座る位置だったり。例えば正面に座るよりも、45度に座った方が敵対関係にならないよね。
 
参加者:たしかに!
 
清水:うんうん、自分が話し手の時にどうしたら話しやすかったのかを考えてみてください。
 

伊賀:

それからインタビューでは、相手の話の中で気になったキーワードや、やり取りの中で” 熱”のある言葉が出てきた時、きちんとそこ を掘り下げてみてください。聞きたい質問もたくさんあると思いますが、コミュニケーションの中 で出てきた言葉を大切にして、見過ごさないことにチャレンジしてみるのが大切です!
そのヒントになるのが、「閉じた質問」と「開かれた質問」の違いです。ちょっとやってみますね!
 
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伊賀:今日の朝ごはんは何を食べましたか?
冨川:私の朝食はいつもパンとコーヒーです。
伊賀:なんでいつもパンとコーヒーを選ぶんですか?
冨川:以前スターバックスで働いていて、コーヒーが大好きなので毎朝飲んでいます。

 

伊賀:

開かれた質問をしたほうが、受け手は答えを考えていますよね! 開かれた質問の方が、より深い答えを引き出すことができるんです。
 
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清水:「イエス」か「ノー」で答えられる閉じた質問は、聞き手の聞きたいことを、ただ聞いているだけなんだよね。聞き手の意図や仮説を 証明していくだけなら、インタビューをする意味がない。
5W1Hの質問を使って、インタビューの主役を話し手にしてください。
 

インタビューとお喋りの違いは「ゴールがあるかどうか」

 
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駒井:こんにちは、駒井です。僕からは、インタビューの手順についてご紹介させてください!インタビューは多々ありますが、今回は1つのモデルとして、このスライドにある10の手順に沿って進めていきたいと思います。
 
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ということで、インタビューを始める準備として、今からみなさんに1~5までをやってもらいたいと思います。
 
まず決めることは、「インタビューの方針」です。 ただのお喋りではなく、インタビューには何かを明らかにしたいとい
う「ゴール」があるはず。今回は、僕たち学生にインタビューしてもらうので、インタビューの テーマは「SFC生に聞きたいこと」という広いテーマを決めてみました! 今回はアポが取れているので…今からやることは「質問を準備すること」です。
ということで、みんなに<100本ノック>をやってもらいます!
 
参加者:え…。
 
駒井:これはインタビューの練習として誰もが通る通過地点だよ!
 
参加者:なかなかストイック!!笑
 

駒井:

これは、いきなりインタビューをして、思いつきで質問をしても十分な量の答えを得られないことが多いためです。まずは質より量 で、たくさん想像する練習です。
100個も質問を出してみると、自然と自分たちが何を知りたいか、その傾向が可視化されるんです。
 
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清水:

書き出してみると、自分の中で何を考えているか分かるんだよね。事前に何を聞きたいのかをしっかり見える化して、その見える化したものをまとめて質問してみると、体系的なインタビューができる。
 
大切なのは、「相手は自分の思う通りには喋ってくれない」ことです。 自分の方へ無理やり引っ張っても良いインタビューにはならない。 そういう時に、準備ができているほど、相手が予想しない答えにも、 その変化についていけるようになります。
 
さっそく、100 本ノックが始まりました。みんなキャンパスの色んな ところに散らばっていきました。
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質問を考える時間は、おおよそ45分。質問を体系づけるところまで 進めてみると、案外時間がかかりますね。
 
「70 くらいだけど、力尽きてきた…。涙」
「まだいけるけど、時間が足りない!!」
 
100本ノックの難しさ、あちこちから漏れて聞こえてきました。

さて、前半はこれにて終わりです。つづいて後半では、実際のインタビューと、やってみて見えてきた気づきに迫ります。
後編はこちら>>【後編】Family History Lab.@SFC 「質問は『共通点を見つけたい』というサイン」

事務局・千葉雄登

この記事は高校生ではなく、僕が執筆させていただきました!/青春基地ウェブ運営部ディレクター・慶應義塾大学2年