夏休みが始まり、学校の宿題に受験勉強に日々忙しい人も多いのではないでしょうか?そんな夏休みに進路に悩む高校生を対象に「スタディサプリLIVE」が開催されました。
RECRUIT MARKETING PARTNERSが主催するこのイベントは2日間で20名以上のゲストが登壇し、自分が今まで歩んできた道のりや、その中でどのように進む道を決めてきたのか、高校生へのメッセージを伝えるものです。
ただ学ぶのではなく、学ぶ手前に出会いやきっかけを。
「なぜこのようなイベントを開いたのか、スタディサプリの言い出しっぺとして話をさせてください。」そんな一言で話し始めたのはこのイベントを主催するRECRUIT MARKETING PARTNERS社長の山口文洋さん。現在38歳の山口さんが、社内の新規事業コンテストに6年前出場し作ったサービスそれが「受験サプリ」(当時)、現在の「スタディサプリ」でした。
「高校生みんながフェアな勉強環境にあるかどうかでいうと、学ぶ環境に格差があることを知っていたし。調べる中でその現実を目の当たりにしました。僕は平等な受験環境をつくりたかった。」
そんな山口さんの課題意識から始まった「スタディサプリ」は現在30万人の人々に使われています。全国の高校生は約300万人、その10%が「スタディサプリ」を使って勉強している計算です。しかし、これだけでは満足しないと山口さんは言います。
「夢とか、打ち込むものが見つかれば夢中になって勉強するのに、何となくやらせられ感で勉強しても身につかないんじゃないかな。僕は働き始めた当時、本気になれなかったんです。そんな中で32歳の時、人生をかけて挑戦したいサービスにたまたま出会ったんです。」それは山口さんの体験から生まれた疑問です。「ただ学ぶのではなく、学ぶ手前に出会いやきっかけがあればいいと思っています。このスタディサプリLIVEでいろいろな人の話を聞いて欲しい。きっと人生に何らかの影響を残す一瞬を体験できると信じています。」
みなさんは何を大切に生きていきたいですか?
御手洗瑞子さん
外資系コンサルティングに勤務した後、ブータン政府の初代首相フェローを務める。東日本大震災を機に帰国。現在は株式会社気仙沼ニッティング社長。
最初のスピーカーは株式会社気仙沼ニッティング・御手洗瑞子さん。これからさらに進む少子高齢化と人口減少、そして技術革新によって日本にいまある仕事の49%がコンピューターに代替され、20年後に高校生が大人になった頃には世界は変わってしまっていると言います。
「だから、何になりたいかより、どう生きたいかを考えなくてはいけない。」
そんな御手洗さん自身、自分は何をやりたいのか、何になりたいのかということで悩んだ人の一人です。
15歳で参加した世界中から参加者が集まるキャンプ。ルールを守らない参加者に向けて自分たちでいいキャンプを作ろうという精一杯の呼びかけへの反応は「それは日本人の価値観じゃないの?瑞子は自分の価値観を押し付けているだけだよ。」と意外にも冷ややかなものでした。17歳の時にはフィリピンのマニラで開催された国際会議に参加。フィリピンで目にしたのはたくさんの物乞いの子どもたちでした。一緒に車に乗っていた人の「やめなよ、キリがないから。」という一言にモヤモヤしながら自分はどうすればよかったのか悩みます。「どうすればみんなが幸せに暮らす世の中になるんだろう。」
その問いはある時、御手洗さんの中でつながることとなります。
経済学部を卒業し、ブータンで仕事をしていた2011年、東日本大震災が発生。気仙沼で多くの人が家や職を失ったことを知ります。仮設住宅に住んで、保険で暮らすことはそこに住む人々の誇りを奪うこともあります。そこで御手洗さんは手編みのセーターやカーディガンを作り、売ることを始めました。
「私が死ぬほど毎日考えているのは『お客さんとは何か』『働く人にとっての幸せとは何か』ということです。誰もが働く人である時もあれば、お客さんでもある。」そこからみんなが幸せに暮らす世の中にするために、自分に何ができるのかを考えています。
「心の芯になるような価値観を育てて欲しいと思います。いろんなことをして、今の道を生きている人の話を聞いて、吸収してください。みなさんは何を大切にいきていきたいですか?」
自分を育てる責任者は自分。自分で自分を育てる。
平松庚三さん
AOLジャパン株式会社代表取締役、弥生株式会社代表取締役会長、株式会社ライブドアホールディングス代表取締役社長などを務めたのち、現在は小僧com株式会社会長を務める。
数々の企業で社長を務め、今は小僧com株式会社会長の平松夷三さん。ハーレーに乗ること、飛行機に乗ること、宇宙飛行士になることなどその多趣味な一面を紹介したのちに赤裸々な告白をします。
「僕の今日の本当の自慢話、僕は試験に受かったことがないんだよ!」
中学生の時から受験を経験してきた受験、しかし自分が納得する結果を得たことは一度もないと言います。大学入学後は大学へ行かずにヒッチハイクやトラックの運転手などをする日々。自分の中で「このままでいいのかな。」そんな疑問が湧き上がってきます。
もう一度やり直すことを決意した平松さんはアメリカへ、憧れていたワシントンD.Cの大学を受験します。一度落ちるも再び挑戦し、見事に合格。必死に勉強をしてなんとかSONYへの就職を決めます。。
実は平松さんは同級生よりも5年遅れて社会人になりました。「でも、それって何なの?何を失ったの?」失ったものよりも、その5年間で得たものを考えた平松さん。
「自分は何をしたっていいんです。自分を育てる責任者って自分ですよ!自分で自分を育てる、っていうのは自分にしかできないんです。」
そんな言葉を投げかけて、平松さんのスピーチは終了しました。
自分の中の良さを自分で信じて。
テリー伊藤さん
演出家、テレビプロデューサー、タレント。テレビ番組のコメンテーターも務める。
高校時代、大学時代を通してずっと遊んでいたテリー伊藤さん。その結果、将来何をしようか全く決めていませんでした。大学卒業後、周りはみんな就職を決めていく中、テリーさん一人就職先も決まらず、実家でお寿司屋さんに卸す卵を焼いていました。親から勧められた寿司屋も7ヶ月でやめ、内緒で彼女の家に転がり込む日々。「このまま人生終わっていくのかなって、そこで人生を振り返ったんです。」
そこで思い出したのが大学時代に自分が作ったコンサートで幕が閉まる瞬間に流した涙でした。自分の力で涙を流したことがその時初めてだったというテリーさん、そこから演出の仕事へと進みました。
そこから演出家、作家、コメンテーターと様々な仕事を経験してきたテリー伊藤さんは高校生へ1つのポイントを紹介してくれました。
「新しいところへ行ったら、人生ナメてかかって真面目にやれ」一生懸命やるのは当たり前。でも自分の良さや自分の感性を信じることは間違っていないと言います。
「自分の中の良さ、それを自分で信じてください。勝利の方程式はいくつもありますが、これが一番大切なことです。」
その人それぞれに中心はある。
小原好喬さん
富山県南砺市城端の伝統工芸・城端蒔絵の16代目。日本のみならず、世界で個展を開くなど世界的に注目されるアーティスト。
城端蒔絵という伝統工芸の16代目の小原好喬さん。気が強く、元気だけど勉強が嫌いで、地元のお祭りが大好きだった小原さんは現在、国内、海外の様々な展覧会に招かれ、講演も行っています。
日本を代表するアーティストとなった今、その小学生、中学生、高校時代を知る人には変わった、しっかりしたと言われることも少なくありません。しかし、自分は根本的には変わっていないと言います。
「人には人それぞれの中心があると思っています。それが人生の楽しいこと、大切なことだと思います。まずは自分の足元から見つめ直してみてください。」
自分が愛するものが自分にとって一番だと言う小原さん。4畳半の作業場はとても質素なものですが、その作業場を訪れるために世界中から人が来るといいます。『お前は黙っていればいい、そうすれば真実を求める人がやってくる。』そんな祖父の言葉を胸に、自分を信じてまっすぐ進んでいます。
「真実を残すこと、それが私の伝統工芸への答えです。」
感動から生まれたアイディアを作品にしてきた先祖あってこそ、今の自分がある。だからこそ今日という日を大切に生きています。