日本財団CANPANとオルタナSが開講する「NPO大学」が7月12日開講しました。受講生は富山や名古屋、大阪などからも集まった28名の大学生や社会人で、これから毎月1回の講座でNPOやNPOの情報発信について学んでいきます。
各回の講師にNPOを立ち上げ活動を続ける方々を招くNPO大学、初回のテーマは「発信技術とファンドレイジング」、講師はオルタナS副編集長・池田真隆さん、CANPAN・山田泰久さん。
「NPO大学では『最強のパブリッシャー』を育てたいという思いが私の中にはあります。」
そう語る池田さんは大学3年生の時にオルタナに関わり始め、現在27歳。オルタナS副編集長を務めています。
これがオルタナS流、文章を書くコツとは?
いろいろな文章の書き方が世の中には存在しますが、池田さんが今回教えたのは「ジャーナリズム的書き方」です。オルタナ編集長は以前、日本経済新聞で働いていたこともありオルタナの記事執筆の基本はいわゆる「新聞型」。
「もしかしたらこれから僕が教える文章の書き方は古いかもしれません。これらはとても基礎的なものですが、その基礎を知って書く人とそうでない人とでは成長のスピードが違うと思っています。」
そんなオルタナS流文章の書き方とは、一体どんなものなのか。
「まずは何がニュースになるのでしょう?そこには基準があります。読んで「へー」と思うあの感じ。そして「変化」、最後は「へそ」つまり核心を突いているということです。オルタナSの場合、あまり知られていないこと、社会性があるかどうか、おもしろいかどうかを大切にしています。」
おもしろいかどうか、はそれぞれ人によって基準が異なります。だからこそ、自分の中で基準を持つこと、それが自分なりの記事の企画の見つけ方です。
何がおもしろい見出しか、自分がわかっている!魅力的な見出しのつけ方
その記事が面白いかどうか、それは見出しにかかっています。内容がわかりやすく、面白いものはクリックされるし、わかりにくければスルーされる。だからこそ見出しに7割の力を注いでいるという。
「最後に見出しを決めるというやり方もありますが、あまりオススメできません。見出しを書くということはカメラでいえばピントを合わせるようなもの、だからこそ自分の中で何を書くのか整理するためにも見出しを最初に書いています。」
そしていよいよ本文へと入っていきます。記事の基本は三段論法、そして結論を1番最初に述べることです。もともとは記事の差し替えが頻繁に行われる新聞業界で、いつでも文章を削れるように大事なことを最初に述べ、後ろの情報は削られても伝わるようにしたことがこのように引き継がれていた文章の書き方です。
ポイントは3つ。
(1)結論を最初に述べる
(2)主語と述語の間をなるべく縮める
(3)順接を避け、逆説を用いる
これらを意識して文章を書くことで誰が何をしたのか、分かりやすい文章が出来上がります。
「序破急を意識して、基本的には短く書く癖をつけてから文章を書いてもらえればなと思います。短く書く、ファクトを拾う、それを続けると切り口が良くなります。」
そのためにも50文字以内の箇条書きを書くことを繰り返していきます。
最初に結論を述べると記事を書くことは難しいのでは?そんな疑問を抱く方もいるかもしれません。
「最初に言いたいことを出していいのか、と思うかもしれません。実は結論を最初に出すと本文の最後の結論はさらに深いものに至ります。言いたいことを最初に出すので、さらに一歩進んだことを結論で書かざるを得なくなるんです。」
見出しと序破急、それらが出来上がると記事の7割〜8割は完成したものも同然。後は本文で大事なことを淡々と述べていく、これがオルタナS流文章の書き方です。
「よい団体=よい活動とよい情報発信をしている団体」
2人目の講師、NPO法人CANPANセンター代表理事・山田泰久さんは社会貢献活動やCSR活動を盛り上げるために様々なイベントやセミナーを普段から開催しています。今回はNPOのファンドレイジングについて教えていただきました。
「昔はよい活動をしていれば誰かが気づいてくれたかもしれません、しかし今はたくさんのNPOがある中で自分の団体の情報を発信することが非常に重要です。」
日本にあるNPO法人(特定非営利活動法人)の数は50,780団体。日本全国のコンビニの数が54,791店舗であることを考えるとその数の多さが伺えます。さらに法人格を持たない団体などを含めると200,000団体ほど存在するのがNPO業界の現状です。
「東京では認定NPO法人カタリバや認定NPO法人フローレンスなど、課題解決型が多く見受けられますがそれ以外のタイプのNPOも存在します。」
続いて山田さんが紹介したのはNPOの分類の仕方です。多くの人にとって馴染みのある「課題解決型」はあくまでその1つに過ぎず、スポーツ普及や音楽普及活動といった「普及進行型」、そして町内会単位で地域の課題を解決する「地域密着型」などその種類は様々です。最近ではNPO法人チャリティサンタやNPO法人コモンビートなどのような「価値創出型」といった、価値を新しく提供し作っていくNPOも増えてきています。
その活動にかかるお金は本来誰が負担すべきなのか、社会構造を見極める重要性
NPOの資金源について考える時、重要となるのが「その活動にかかるお金は本来誰が負担すべきなのか?」という問いです。NPOは行政や受益者の負担が難しい場合に寄付や助成金に頼ることになります。よいことをやっているから寄付をお願いするのではなく、本来負担すべき人が負担できない社会構造だから寄付をお願いするといった着眼点が大事です。
「NPOのみなさんの情報発信、情報開示はNPO業界全体の信頼性アップにつながります。まだまだNPOについて知らない人が多いからこそ、業界を挙げて情報を届ける必要があります。」
そんなNPOの情報発信で大事なポイントは2点。
(1)専門的な情報を待っている人へ届ける
NPOは誰に情報を届けなくてはいけないのか、今一度考える必要があるとCANPAN・山田さんは語ります。NPOが活動に取り組む中で困っている人に適切な情報を届けるという視点はついつい抜け落ちてしまいますが重要な役割の1つです。
(2)情報をお発信できない人に代わって発信する
そして2点目はNPOが地域のメディアになるということです。
NPOにとって重要な活動の「可視化」と「価値化」
なぜNPOは情報発信をするのか、それはNPOが外から見ただけでは分かりにくい存在であるためです。活動現場は参加や見学が難しい場合もあり、自ら活動を可視化していく必要があります。そしてそれらの活動が社会にどのような価値をもたらすのか、「価値化」ができて初めてNPOは人々からの共感を集めることが可能になります。
「人はそれぞれ異なる共感ポイントを持っています、取り組む問題に共感する人もいれば、問題解決に取り組む姿に共感する人や、問題解決の手法そのものに共感する人まで様々です。だからこそ、それぞれのNPOでどこが字団体の活動の共感ポイントになるのか探りながら情報発信をすることが重要なポイントです。」
NPOにとって避けては通れない「情報発信」と「ファンドレイジング」について学んだNPO大学第1回。NPOが自団体のWebサイト/SNSアカウントを持ち情報を発信していくことが当たり前になりつつあるからこそ、そしてそれらが非常に手軽に行えるからこそ、その意義や型を学ぶことが効果的な情報発信と共感を集めるための近道なのではないでしょうか。
次回はNPO法人Rebit代表理事・薬師実芳さんをゲストに「LGBTから考えるダイバーシティ&インクルージョン」について学ぶ予定です。