TOKYO MXの裏側に潜入!「生放送は何が起こるかわからないから、おもしろい。」演出・高橋昌志さん

2016年7月1日

 
番組の土台をつくる「演出」のお仕事。お仕事の内容だけでなく、朝の番組のスタッフさんならではの生活習慣について、さらにこのお仕事をしているからこそ感じる「テレビ」についての興味深いお話しもうかがうことができました!
 
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——どんなお仕事をされているんですか?

 

「モーニングCROSS」という番組の「演出」の仕事をしています。
演出の仕事はピンからキリまであります。スタジオでADさんに指示を出すことも仕事の一部です。PDは一日単位で番組を管理してますが、僕は番組の1週間や1か月単位での流れをトータルで管理します。あとは、書いてあるものを具体的に目に見えるものにしていく作業をしています。
例えると、プロデューサーの人たちが建築士で図面を引いて、僕が大工さんを集めて指示をして、ディレクターである大工さんが実際に作業をして家を建てる、という感じです。

 

——演出の仕事を始めるきっかけを教えてください!

 

高:

僕はもともと物書きになりたかったんですよ。
でも学生時代に通っていた飲み屋での知り合いでたまたまこういう業界で仕事をしている人がいて、「書くの好きなんだー、でも実際にそれを画にする作業も楽しいよ」と言われて、仕事の現場を覗かせてもらったことがきっかけですね。当時まだテレビが元気だったこともあって、この世界に入りました。
 
編集部:そんな偶然の出会いがきっかけだったんですね…!
 

高:

実際にこの仕事をしてみて、バイトとは違って自由だし、めっちゃ怒られることもあったけど、毎日毎日結果が出る。打ち込んだものに結果が出ると嬉しいじゃないですか。そういう経験が日々毎日あるわけですよ。失敗したこともあるけど、成功したり面白かったことも日々あるのはすごく刺激的な事だし、楽しいことですね。
 
編集部:演出のお仕事を始めた頃はどんな感じでしたか?
 

高:

普通の制作会社は演出とカメラは別の部門なんですけど、ADとして入社した僕の会社は一緒だったので、全部覚えました。覚えないと仕事できないので。本当は人数が足りてなかっただけだと思うんですけど。笑 
 
編集部:それは大変ですね…。
 

高:

でもそういう知識があるだけで、その後現場に行ったときに、「こういうことが出来るんじゃないですか?」とか言えたり、周りにいちいち聞かなくても「できるんじゃないですかね!」と前向きに周りに言えましたね。
 
編集部:結果的に後のお仕事で役に立ったんですね!
 

高:カメラとかの専門的な技術に興味を持ってそっちに行く人もいるんですが、僕は人と話したりする方が好きだったので残ったというだけです。
 
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——就職した当時はテレビが元気だった、とおっしゃいましたが、最近のテレビは元気でないと感じますか?

 

高:

元気じゃないでしょ。テレビを観ていても、どのテレビ局の番組なのかパッと見では分からないと感じませんか?
 
編集部:言われてみればそうかもしれないです。
 

高:

どこでも同じような感じで、どっかで成功したものを少しずつ変えながらやる、みたいなやり方です。
昔はもっと各局に個性があったんですよ。ドラマのTBSとか、お笑いのフジとか、各局強いところがあって、ドラマ観たいから月9みる!とかそういう感じでチャンネルが動いてた気がします。あくまで僕の勝手な主観ですけど。
 
編集部:確かに…。
 

高:

使う言葉や取り上げる内容も、問題にならないように自粛したりする。今って、ネットで騒がれてからそれを見るって感じじゃない。先入観のついてるものを見られても、そこには本当は前後の話の流れがあるのに。今はピンポイントの事で大きな話題になるから、そこに対して警戒しすぎることがある。それに比べてうちの番組はかなり自由なほうかな。僕もいろんなところで仕事させてもらっているけど、この番組は今までに増して楽しいですね。
 

——この番組を作る上で大切にしていることって何ですか?

 

高:

1日ごとの出演者で番組のバランスをとろうとすると齟齬がでると思うんです。だけど毎日やっている番組なので、トータルでバランスがとれるといいかなと思いますね。ゲストの人たちの立場とか考えを曲げてまで喋ってもらう必要はないので、「その人たちが思ってることをそのまま喋ってもらう。」これがこの番組の売りです。反対の意見の人がいるときは「その人にそれはおかしいでしょ」と言ってもらっています。直接対峙することもあるし、熱くなっちゃって話が進まないこともあるから、そうしたら日を分けたりします。トータルで「いろんな多様な意見があるんだよ」ってことが伝わればいいなと思います。
 

編集部:

確かに番組を観ていても、ツイッターを使いながら様々な意見を紹介している様子がおもしろかったです!
 

高:

1つの物事に対して、いろんな意見が存在するけれど、最終的にはどこかの方向を向かないと何も進まない。「ああいう意見もあったな」と様々な意見が残りながら進んでいけると良いと思うんです。だから、いろんな人の思いが出るようにできるといいなと思います。答えがないのでそこが難しいんですけど。それがモチベーションにもなるし、重荷でもありますね。
 

——タイムテーブルを見てて朝が早いと思ったのですが…

※『モーニングCROSS』は毎週月〜金の朝7:00〜8:30放送!
 

僕なんかは終電で通勤しています。お昼ごはんで晩酌する感じです。眠くなってきたら寝て、夕方起きてニュース見て、それについて少し考えながら来ます。Twitterのランキングとその日のトップニュースがどう違うか考えたり、絵があるかどうか、ゲストの人に喋ってもらって面白いかどうかなど考えます。トップニュースだからってゲストの苦手分野を話してもらうわけにはいかないのでそこは勇気をもって捨てますね。

 

編集部:

その日のゲストの方のことも考えて番組の内容は考えられているんですね。
 

高:

台本の薄さからもわかると思うけれど、基本的には出てる人たちにお任せって感じ。ゲストが固定じゃないところもうちの番組の売りなので、ある程度組み合わせを変えたり。そういう意味でもいつ見ても新鮮な感じで僕も楽しみです。
 
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——番組内容を決めたり、昼夜逆転の生活だったり、色々調整しなきゃいけなくて大変だと思うのですが、その中で生放送の面白さは何ですか?

 

高:何が起こるか分からないところです。
例えばどこかに取材に行くときに、色々と想定して準備をするんですが、実際にその準備した通りのインタビューができたところでつまらないんです。僕ら程度が分かっていることが返ってきても面白くない。自分たちが思っていたことと違うことが返ってきて、予想が裏切られたときの発見があるから面白いんです。
それが生でできるからなおさら楽しい。そうしたら時間がなくなるんですけど。(笑)もっと聴いてたいけど生放送なので、完結させなきゃいけないので、そこは戦いですね。伝わったかなとか、伝えられたかな、とか届いたかな、とか日々繰り返しています。
生活時間はそういうリズムで暮らせば大丈夫です。このご時世いろんなプロの中で楽しく仕事できて、自分なりの主義、仕事の流儀を通せるだけ楽しいです。

 

——番組を作る中で、どれくらいの方が関わっているんですか?

 

高:制作スタッフだけで20人くらいじゃないですか。すごい少ないですよ。「めざましテレビ」とかだと100人はいきます。その分占いがあったりとか。こっちには出てる人がずっと喋ってるので、一人一人の負担は大きいかもしれませんね。

 
編集部:一時間半の生放送なのにその人数はすごいですね!
 
高:これがギリギリですね。笑
 

——テレビの業界に憧れる高校生が今できること、やっておくべきことはありますか?

 

高:

テレビは画なので、物の見せ方を自分なりに考えてみてください。人間の目にはズーム機能とかフォーカスはないけど、カメラはこっちが操作するとできます。自分が感じたものを実際の画にする時にどうしたらよいかを考えてみてください。漫画のコマ割りとかポスターとか、周りに転がってるものから何をどういう風に見せるかを、日々考えてください。そうするだけで他の人とは違うと思います。あとのことは入ってやってみてから学ぶしかないです。
 
編集部:身近な材料から日々意識してみるのが大切なんですね。
 

高:

そうやって絵の意識が変わるだけで、何となく楽しくなると思うし。楽しくないと続かないことなので。
 
編集部:確かに…。
 

高:

やりたいことっていうのは、何をもってテレビをやりたいのか、ということに、関わってくると思う。テレビ局でキムタクに会う為に、とかかもしれないし。それで、すれ違うまでやめない、と頑張るのもいいと思うんだよね。やりたい仕事の中に、これが好きっていう趣味とか他の部分が入っているわけなので、それを見つけられれば全部続けられると思います。それを見つけるのが大変かもしれないけど。
 
編集部:頑張ります!ありがとうございました!

テレビを観ているだけではわからないことを肌で感じることができて、私にとって本当に幸せな体験でした。スタッフさんを取材させていただいて感じたのは、お仕事に対して楽しく、誇りをもって取り組んでいらっしゃるということでした。大変なことを多く経験し、続けてきたからこそ今があるという山本さんのお話は、これからも忘れずにいたいと思う大切なメッセージになりました。高橋さんそして堀さんとお話しすることで、この番組やテレビ業界の魅力をさらに強く感じることができました。お忙しい中お時間をつくっていただいたことにとても感謝しています。本当にありがとうございました!

えの

スタッフのご厚意で生放送の現場を間近でみることができる貴重な時間となりました。
そしてなんと今回はキャスター、ディレクター、演出家の方一人一人にお話を伺うこともできました!
自分の目で見て、直接お話を聞くことで、自分が知らなかった一次情報(掘さん風に!)にたくさん触れることができとても嬉しかったです。ありがとうございました!

のどか

えの

のどか