このカテゴリ「シゴトとシンロ」は、そもそも高校生の私たちが「大学やその先にどんな分野や世界があるのか知らなさすぎる!!」と生まれました。学部名で何となくよりも「この先生に学びたい!」と思えた方がかっこいい。
編集部で大学の研究室に突撃しようと決めた時、真っ先に浮かんだのが堀川さんでした。とにかくTwitterが面白いし、クマムシへの愛を直接感じるために、会ってきました!
堀川大樹さん:通称クマムシ博士。’08年NASA、’11年パリ第五大学、’14慶応義塾大学にて、クマムシの研究を進める。むしブロが人気のほか、クマムシへの愛のあまりキャラクター「クマムシさん」を考案しプロデュースするなど、クマムシに溢れた日々を送っている。
主な業績は、クマムシの放射線耐性解析や本生物種の実験システム確立など。ヨコヅナクマムシのエサを発見、飼育が容易になり、クマムシ研究を飛躍的に発展させた。著者『クマムシ研究日誌』『クマムシ博士の「最強生物」学講座』。
オンラインサロン「クマムシ研究所」、メールマガジン「むしマガ」を運営。
まずは実際に、クマムシを見せてもらいました!!
クマムシとは>>コケなどの湿地に住む体長0.3mmほどの微小動物、緩歩動物門の総称。陸上のクマムシは乾燥し生活環境が悪くなると体を球状に縮めて仮死状態のまま生き延び、湿らせると蘇生できるため、未だ多くの謎に包まれているが「最強の生物」と称されている。最近注目を集めている生物で、とくにはお笑い芸人「クマムシ」でその名を知られるようになった。
編:(顕微鏡を覗く) かわいい!!足が動いてる!!(笑)
堀:かわいいよね。オレンジのクマムシは珍しいんですよ。
これは「ヨコヅナクマムシ」です。
堀:こっちにいるのは、「トゲクマムシ」です。
編:へえ〜全然違いますね!トゲがある!クマムシの実際の大きさはどのくらいなんですか?
堀:大体0.2~0.3mmですね。
編:シャーペンの芯より細い!(笑)
ーークマムシの寿命はどのくらいですか?
堀:ヨコヅナクマムシだと、1カ月~2ヶ月ですね。
編:眠らせてもそのくらいですか?
堀:乾燥して眠らせると室温で最長10年くらい!でも眠らせて冷凍庫にいれたら、もっと生きる。絶対零度にすれば半永久的に生きてられると思います。誰も実験できてないけどね。
編:今この研究室のどこでクマムシを飼っているのですか?
堀:実は冷蔵庫にいます。ちょっと最近忙しかったので眠らせてました。(笑)
編:フフフ(笑)
編:この中にどれくらいクマムシがいるんですか?
掘:うーん大体2000匹くらいですかね。
編:すご・・・見たいです!
堀:(顕微鏡を覗きながら)死んではないですね、よかった!これも「ヨコヅナクマムシ」です。キャラクター・クマムシさんのモデルになったクマムシです。
編:眠らせたり起こしたりしてクマムシの負担にはならないのですか?
堀:乾くのに失敗して死ぬやつも稀にいるので、必ずしも負担になっていない、いうことはないと思いますが、基本的には乾いて寝ているときだけ寿命が止まっている感じになっているんです。
編:時が止まるんですね。
編:寒いときだけではなくて、熱いときもクマムシは自分から眠ったりしないんですか?
堀:実は今そのことについて調べています。起きているときは40度くらいまでしか耐えられないけど、乾燥していると100度まで耐えられるんです。
編:すごーーーい!!本当に不思議な生き物ですね。クマムシは何を食べるんですか?
堀:クロレラです。でも普通のクロレラじゃだめで、クロレラ工業株式会社の「生クロレラV12」というものじゃないとダメです。
引用:http://www.chlorella.co.jp/products/suisan
編:V12じゃないとダメなんですか?
堀:そうですね、V12じゃないとだめです(笑)
編:クマムシはなかなかの美食家なんですね(笑)
ーークマムシは先カンブリア時代からいると聞いたことがあるのですが、なぜ絶滅しなかったのだと思いますか?
堀:陸にいるクマムシは乾いたコケの中にいるんですけど、結果的に資源の奪い合いとか、天敵とかを避けているんです。
編:現在までどのくらい進化してきたんですか?
堀:形自体はあんまり変わってないです。(笑)ただ種類は今でも1200種以上知られているので、種が分化しているなっていうのはありますね。
※今回の取材の様子は、SDカードを壊してしまい一枚だけです。ごめんなさい!
※この写真以外は、堀川さんに提供していただきました。
堀川さんと、「クマムシ」の出会い
——堀川さんの研究について教えてください!
堀:現在は、慶應義塾大学先端生命科学研究所の特任准教授・荒川和晴さんがリーダーの研究室にてクマムシの研究をしています。クマムシの飼育やDNA解析をしながら、常に「なんでクマムシは強いのか」を考えています。
編:いつからクマムシを飼っているんですか?
堀:2004年からです。
編:旅行の時はどうされるんですか!?
堀:クマムシは便利なので、乾燥させて眠らせておいて、必要な時に水をかけて復活させます。
編:あ、だからさっき冷蔵庫に・・・!(笑)
——クマムシとの出会いを教えてください!
堀:大学に入って、唯一面白いと思った先生がクマムシを研究していたことがあったんです。だから昔から知っていたわけでもないんです。
編:え!!
堀:僕は、人がやってないことをやるのが好きなんですが、クマムシの研究って調べてみると、未知なことばっかりで…。それにクマムシは実際に見るとかわいくて、でも強い。かわいいし、強いし、誰にも研究されていない!僕にとっては最高でしたね。(笑)
——堀川さんは、どのような高校生活を送られたのですか?
堀:えーーあんまりしゃべりたくないですね…。(苦笑)
欠席や遅刻が多くて進級ギリギリでした。当時は「ストリートファイター2」というゲームにハマっていて、それだけは誰にも負けませんでした。
編:(笑)
堀:ほんとにそれ以外はひどくて、成績もほんとに悪くて、生物のテストが8点とかでした。
編:え!!!いつから生物を好きなったんですか?
堀:元々昆虫は好きだったんですよ。それで二浪して神奈川大学に進学しました。
「研究」だけじゃない堀川さんのシゴト
——普段、どのような1日を過ごされるのですか?
堀:今日はちょっと変わった1日でしたね(笑)
先日、京都で行われた「いきもにあ」で講演をして、僕のデザインした「クマムシさん」というグッズを販売してきたのですが、今日はその整理と、ネット注文の確認をしました。(笑)
研究以外だと、京都の高校からもらったクマムシの観察をしたり、このように取材がたまにあったり。土日は僕の配信しているメールマガジンやブログの投稿をしたり、講演をしたりしています。
編:研究とクマムシさんに割く時間は、どのくらいの比率ですか?
堀:うーん 6対4くらいで研究をしています。僕は身軽な身分だけど、実は教授だと授業とか雑用とか結構多いので、意外と研究に割く時間はあんまりないんですよ。
編:へ〜!
博士からプレゼントしていただきました!
——クマムシさんグッズの利益が、研究費になっていると見たのですが、どこからその発想が出てきたのですか?
堀:一昔前までは「クマムシ」って生物学者にさえあまり知られていないくらいマイナーな生物だったんです。クマムシ研究者としては、もっとみんなに知ってもらえたらいいのにってずっーと思ってて。
そんな中、2008〜2009年くらいからクマムシがSNSなどで言及されるようになってきているのを感じたんです。特に女性から「クマムシかわいい!」と。これほんとに頭の悪い発想なんですけど、クマムシを研究してる仲間と「クマムシのキャラクターを作ったらウケるんじゃない?」「お金入ってきたら研究費に使えるんじゃないの?」って作っちゃったんです(笑)僕は後先考えないんです、いつも。
編:「クマムシさん」のデザインは誰がしているんですか?
堀:ぼくがやりました。Illustratorも触れないので、最初のデザインはパワポの丸とかで作りましたよ(笑)
——クマムシさんのグッズはどのくらい収益になっているんですか?
堀:いい質問ですね!実は支出と売り上げのバランスで言ったら、赤字なんですよ。めちゃくちゃ儲かってバンバン研究費に使えてる!というわけではないですね(笑)ただ支出の中には機器の購入費や学会の旅費などが含まれているから、確かに収益は出てなくても助かっています。
編:これから増やしていく予定は…?
堀:それはねー、難しいですよ!(笑)やってみて分かったことは、やっぱり資本がないと中途半端で終わっちゃうんですね。みんなから「思ったよりよくやってるね。」とは言われますけど、難しい(笑)
編:ちなみに売り上げはどれくらいなんですか?
堀:そうですね・・・累計で2500万円くらいですかね。
編:えーー!多いですね!すごい、びっくり!
堀:でも目的はお金儲けじゃなくて、このグッズによってクマムシをより多くの人に知ってもらうとか、生き物を好きになってもらう、ってことなんです。クマムシさんからクマムシを知った子供が将来、研究者になったら嬉しいですね。実際、自分が予想してなかったくらいコアなファンが出てきていて、すごく嬉しいです。例えば限定グッズを売れば、並んでわざわざ買いに来る人がいたり、この間も一瞬で完売でした。
編:へえ!
堀:経済的な資本だけじゃなくて、社会的、文化的な資本をつくることが大事だと思うんです。みんなに喜んでもらう活動をすることで、いろんな人に協力してもらえるようになりますし。青春基地も同じコンセプトですよね。