NPO大学第6回「アニマルウェルフェアに配慮していれば愛情は生まれてくる」NPO法人アニマルライツセンター代表・岡田千尋さん

2017年1月17日

「思いやりを体現しよう-動物愛護を知る-」をテーマに開催されたNPO大学第6回。ゲストはNPO法人アニマルライツセンター代表・岡田千尋さんです。
 
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岡田千尋さん
動物の権利活動を行っているNPO法人アニマルライツセンターの代表。
 

知っておきたい、アニマルライツとアニマルウェルフェア

 
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動物愛護に関して使われる言葉に、「アニマルライツ」と「アニマルウェルフェア」という2種類の言葉があります。動物が動物らしくいられる権利を指す「アニマルライツ」、それぞれの特性を尊重し合いながら生きていくことを目指す、哲学的・理念的な考え方です。
一方で「アニマルウェルフェア」とは人間が動物を管理する上で、動物の生態や欲求を妨げることのないように扱いましょうという考え方で、科学的なデータに基づきその条件が定められています。
 
「私は”愛護“という字が嫌いです。好きだから動物を守るのではなく、人の権利と同じように守るべきだから守るんです。」
「私は高校時代、新聞部に所属していて、そこで当時は年間70万頭もの犬猫が殺されていることを知りました。その時、ありえないこれ!と思ったんです。」
実は動物へのアレルギーを持ち、どちらかといえば動物が苦手だという岡田さん。世の中に存在する理不尽をなくしたいという思いがモチベーションとなり、岡田さんを突き動かしています。
 
NPO法人アニマルライツセンターは「アニマルライツ」の視点から、非倫理的な殺害、虐待、遺棄をなくすための活動を行う団体です。犬猫などの殺処分への問題への取り組みや、畜産や動物実験の実態を明らかにすることを通じて少しでも多くの動物の犠牲がなくなるよう努めています。
 

世界最低ランクの日本の「アニマルウェルフェア」

 
特に残酷なこととして岡田さんが挙げるのは動物実験と畜産です。
ケージからねずみを出し、シリンダーに詰めて尻尾だけを出し、採血する。この工程だけを見ても動物へのストレスが大きいことは明らかです。日本で行われている動物実験は1,100万頭、その数はEU全体と同じ規模となっています。
「日本の大手企業は化粧品での動物実験をやめる方向で動いていますが、法規制までには至っていません。なので消費者の声が届きにい原材料をつくっている企業では動物実験をやめさせることが難しい状況です。」
 
「世界では、動物福祉なしでは企業は経済活動を行うことができなくなってきています。日本の畜産動物の飼育環境のレーティングはD、ブラジルはBランク、中国がCランクであることを踏まえるとかなり福祉的でない状況と言えます。」
畜産動物の代表的な例として提示してくれたのが、ニワトリです。本来の習性からニワトリは巣の中で卵を産みたがることで知られています。しかし、そのような習性は無視され、ほとんどの採卵鶏の卵はバタリケージと呼ばれる環境で生み出されます。このバタリケージでは、斜めの台が金網で仕切られており、ニワトリ1羽につきiPad1枚程度のスペースしか用意されていません。中にはその中で死んでしまうニワトリもいるといいます。
 

動物保護のための仕組み「サンクチュアリ」

 
「アニマルウェルフェア」の観点で動物の飼育状況を考えた時、劣悪なのは畜産動物の環境だけではありません。
九州の「山地獄」という動物園に27年間檻の中で生活していたポンというチンパンジーがいました。このチンパンジーの置かれた環境が象徴するように、動物園の環境は動物がもともと暮らしている環境とは遠くかけ離れた状況であると言えます。そんなことを背景に、アメリカでは「サンクチュアリ」と呼ばれる擬似自然保護区が設けられ、そこでは動物園等から解放された動物が生活しています。
「広さと多様性が存在することで、はじめて幸せに動物を飼育することができると考えています。」
 
実際にアメリカではゾウの飼育を諦める動物園が増えているといいます。日本の動物園のようなコンクリートの囲まれた環境ではなく、本来あるべき姿での暮らしを取り戻そうとする動きが加速しています。
 

アニマルウェルフェアに配慮していれば愛情は生まれる

 
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「最初に愛情は必要ない、愛情は後でいいんです。アニマルウェルフェアに配慮していれば愛情は生まれていきます。」
「アニマルウェルフェア」に配慮することの中に、動物の不妊去勢手術の推奨も含まれています。一見、「アニマルライツ」と矛盾するような考えにも思いますが、「アニマルウェルフェア」を考える上でも「アニマルライツ」をかんてる上でも今の日本では不妊去勢手術は必要があると語る岡田さん。殺処分が行われている現状を考えると、少しでも不幸な動物を減らすために、個体数を減らす努力も必要不可欠であると岡田さんは言います。
目指すべきは動物が殺されないことではなく、適正に飼育されること。最終的には「動物の苦しみがなくなること」を目指しています。
「でもそれは全然夢物語で、畜産でバタリケージが日本でなくなること、豚の拘束飼育が禁止されることを目標に活動しています。」
そのための法律の改正も含め、岡田さんは今後も活動を続けていきます。
 

事務局・千葉雄登

この記事は高校生ではなく、僕が執筆させていただきました!/青春基地ウェブ運営部ディレクター・慶應義塾大学2年