「エシカル」という言葉を最近、聞くことが増えていますね。そんなエシカルについて伝える活動(啓蒙活動)を行う一般社団法人エシカル協会を立ち上げ、活動を行う末吉里花さんをゲストに招いたNPO大学第5回が開講されました。
末吉里花さん
一般社団法人エシカル協会代表理事。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、「世界ふしぎ発見」のリポーターなどを経て現在はフリーアナウンサーの活動を続けながらエシカルについての発信を行う。
フェアトレードとは!
コーヒー、バナナ、コットンなどの多くは発展途上国でつくられています。しかしその一部は安く買い叩かれ、その結果として私たちは安く購入することができている現状があります。
安く買うことを追い求めるばかりに必要以上の負担を作る人にかけ、作る人は十分な収入を得られず、自立することができません。その他にも様々な健康被害を抱える人が増えています。
そのような状況を変え、作っている人の人権を守り、長く働く事を可能にし、自立して生きて行くことを可能にするためにフェアトレードは生まれました。
どのような課題が実際に発展途上国で起こっているのか、末吉さんが教えてくれました。
「大量生産、大量消費が招く問題は2つ存在します。1つ目は人権の問題です。
インドの工房では子どもが働かされている現状があります。児童労働は禁止されているにもかかわらず、現状として健康を害し、学校に通えない状況にいる子どもは世界中で9人に1人いると言われています。」
「2つ目は環境の問題です。ある統計によると、日本では毎年10kgの服を購入し、9kgの服を捨てている計算になるんです。しかもTシャツ1枚つくるにも、その過程では2000リットルの水が使われています。
またTシャツの原料となるコットンを栽培するためには、一般的には農薬が大量に使用されており、コットン栽培に従事している人のうち毎年約2万人もの人が亡くなっているという事実があります。」
(参考:http://ethicaljapan.org/ethical-consumption)
私たちの「もっと安く買いたい」という思いのしわ寄せが、弱い立場にある生産者へいっているのが現状です。このような問題を解決するためには消費者の一人ひとりが意識を変える必要があります。
エシカルって一体なに?
日本語に訳すと「倫理的な」という意味になる「エシカル」という言葉。末吉さんはエシカルを「人、社会、地球環境、地域に思いやりのあるお金の使い方や生き方」と定義しています。
「すべての人は消費をしています。だからこそエシカルな生き方をすることができると誰でも社会を変えることができると思っています」
「いま世の中に出ているモノって、その背景にあること、誰がどこでどうやって作っているのか分からないようになっているんです。買う人と作る人、その間には壁が存在しています。この壁を取り払うことがエシカルな生き方を広げていくための第一歩です」
キリマンジャロで目にした大量消費の限界
末吉さんがエシカルを意識するようになったターニングポイントは「世界ふしぎ発見」の収録で登頂したキリマンジャロで、溶けてなくなっていく氷河を目にした体験だそうです。
キリマンジャロの頂上にある氷河は2020年には溶けてなくなってしまう危険性が叫ばれており、キリマンジャロの麓の村では子どもたちが植林活動を行い温暖化による環境破壊を食い止めようと努力していました。
「当時、様々な国や地域へ旅をして、そこで見て気づいたことは一部の権力や利益のために犠牲になる人がいると実感しました。でも、環境問題はあまりに広すぎてどこまでやればいいのか分からなかったんです。そんなとき、大好きなファッションで世界を変えることができると知ってフェアトレードの活動に参加することを決めました」
日本にエシカルという考え方が広まったのは2011年の東日本大震災以降。それまで環境に配慮することはありましたが、人や社会、地域までを思いやりモノを買うという流れが広まりました。フェアトレード、オーガニック、地産地消、伝統工芸、応援消費、動物福祉などこれらを大きく括ったものをエシカル消費と呼んでいます。
2020年に向けて考える、これからのエシカル
「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは世界にエシカルな日本を発信するチャンスだと思っています。どのようにモノが供給され、どこから採り、どのように作られているのかを発信していきたいです。」
「日本のGDPの約6割は個人消費なんですね。日本で、消費者である私たち一人ひとりが、自分のお金の使い方を考えることは、作り手にとっても、未来にとっても良い社会をつくることができます。」
実は影響力がとても大きい、私たちのお金。
自分のお金を何に、どれだけ使うのか考えてみることからエシカルな生き方をはじめてみませんか?