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【NPO大学レポート】「子どもの貧困」について考えてみよう。3keys代表・森山誉恵さん

2016年11月28日

訂正(2016.12.4 8:30):本記事において記載しておりました「子どもの貧困」の解説及び「等価可処分所得」の定義に誤りがありましたので、表現・内容を修正いたしました。訂正してお詫びいたします。
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「6人に1人が、子どもの貧困」という言葉を聞いたことがありますか?今回第4回「NPO大学」のゲストは、NPO3keys代表・森山誉恵さん。3keysは児童養護施設で暮らす中学生・高校生の学習支援を行っています。
 
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森山誉恵さん
NPO法人3keys代表理事。2009年に立ち上げた学生団体の活動を大学卒業後も継続、現在はNPO法人として活動を行う。
 

「子どもの貧困」ってなに?

 
 
「子どもの貧困」。
ニュースで何度か聞いたことがあると思いますが、この言葉の定義、みなさん分かりますでしょうか?
 
「子どもの貧困」は、「貧困線」に届かない家庭で育つ子どもたち(18歳未満)の割合です。これが6人に1人と言われています。
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出典:平成25年 国民生活基礎調査の概況
厚生労働省 国民生活基礎調査(貧困率)よくあるご質問

 
少しだけ難しいのですが、もう少し具体的に説明します。
「子どもの貧困率」は、「貧困線」と呼ばれる基準以下で生活する18歳未満の人の割合です。基準となるのは「等価可処分所得」という、手取りの世帯収入を世帯(家族)の人数の平方根(√)で割って調整したものです。「貧困線」とはこの国民一人ひとりの所得を基準として考え、世帯収入から国民一人ひとりの所得を試算して順番に並べたとき、真ん中に位置する人の所得(中央値)の半分のことを指します。
 
データで見てみると、2012年度の「貧困線」は122万円(実質値)となっています。この子どもの相対的貧困率は16.3%、つまり6人に1人なんです。
出典:内閣府平成27年版 子ども・若者白書(全体版)
 
みなさんは、月々どれくらい自分や家族がお金をつかっているか、知っていますか?
今回は「子どもの貧困」のなかでも、さまざまな理由で家族と一緒に暮らせない子どもたちへの現状をお伝えしたいと思います。
 
 
 

森山さんが、子どもの貧困に取り組む理由。

 
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今回のNPO大学ゲスト・森山さんは慶應義塾大学の出身。
大学へ入学後、育った環境や当たり前に受けてきた教育などの違いを感じたと言います。「人の人生ってこんなにも違うんだと思ったんです。幼少期からの高い学習環境が保証されてきたり、留学などの海外経験、スポーツ、趣味や習い事など、何においてもその差を感じました。」
一方で、育ちによっては、水商売などで生計を立てなくてはいけない人たちがいる。生まれ育った環境によってこれまでに差があるのかと違和感を感じていました。就活の時期になり、これから進む道を考えた時に自分の本当にやりたいことは会社で働くことなのか疑問に思い、2009年、一念発起して学生団体を立ち上げました。
それが今の「NPO法人3keys」です。
 
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児童養護施設で暮らす5万人の子どもたち。

 
現在、行政の判断によって家族と引き離され、施設で暮らす子どもの数は全国で約5万人。
子どもの安全確保の必要性は、行政が、近隣の住人に聞き込みや、子どもへの面談を通して判断し、なかでも深刻な場合には「一時保護所」へ預けることになります。
 
「この一時保護所では、保護者との接触のリスクを考えて、一切の外出が禁止されており、学校へ通うことさえ許されていないんです。この一時保護所で約一年間も暮らしていて、その間全く学校へ通学できていないケースを目にしたこともあります。」
 
「一時保護所へ預けられた子どもは、99%他の学校へ転校します。突然、知らない土地、知らない学習環境へ入ることによる不登校となるリスクも低くありません。」
 
家族から離れ、学校からも離れる。家庭の課題に加えて、居場所がどんどん変わっていくことのストレスや不安などは、言葉にできない苦しみがあると思います。
 
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さらに、子どもたちが暮らすことになる児童養護施設の学習環境も万全であるとはいえないと言います。子どもを支える機関は、大きく「教育(文科省)」と「福祉(厚生労働省)」に分けられますが、施設は福祉の管轄。そのため生活費ではない学習面の費用確保が厳しい状況であり、さらには多くの施設自体が人手不足のなかで、子どもの勉強に寄り添い、教えてられる人はごく僅かです。
 
「特に中学・高校になると、学習内容の難易度が上がるため、学習支援のニーズは非常に高いんです。」
 
「勉強の遅れは、幼少期から始まっていると思います。」
 
そこでNPO法人3keysは、特に中学・高校の学習支援に着目し、児童養護施設での学習支援ボランティアの募集と派遣を実施しています。
 
「勉強は1日2日では何ともなりません。本当に根が深い課題です。だからこそ私たちは長期的なサポートを重視しています。」
 
「学習の遅れは、幼少期の経験から始まっているんじゃないかと思うんです。例えば幼少期に絵本を読んでもらったことがない、スーパーで買い物をした経験がない場合には、なかなか数字が生活と結びつかない。
泣いても誰も助けてくれないという不信感が定着していていると、分からなくても誰かに聞く習慣がないんです。」
 
「自分が勉強できないことを何となく自覚している子も多く、学習の意欲があるわけでない。そこから始まるので、ボランティアにとって難易度が高いんです。
そこで研修に力を入れています。親に少しだけでも似ていると、会うだけで拒否反応を示してしまう場合もあるんです。ボランティアを派遣するだけでなく、マッチングや研修フォローの代行も行っています。」
 
児童養護全体が慢性的な人手不足のなかで、 他の支援期間とも念密に連携しながら、行政の枠組みではすくいきれない課題の隙間を捉え、子どもたちの日常を支えています。
 
子どもの貧困の課題に取り組む団体は増えています。地域に根ざした団体が活動を行うことは非常に重要です。しかし、地域だけでカバーしようとしても漏れてしまうことも事実。
だからこそ身の回りの大人や先生に相談できない子どものためのウェブサイト「Mex(ミークス)」を立ち上げました。たくさんの情報で溢れ、知りたい情報に出会うことが難しい中で、NPOや支援団体についてのリテラシーが低くても自分の悩みに関する情報をはじめ、相談窓口としての機能を果たすことを目標にしています。
身近な大人には相談できなかったとしても、ここに来れば悩みを解決する手助けをしてくれる人がいる、そんなウェブサイトを運営しています。
NPO法人3keysは学習支援から活動をはじめ、現在は様々な分野で様々な人との連携を進めています。

石黒和己(いしぐろ わこ)

NPO法人青春基地・代表理事/1994年愛知県生まれ。映画やエッセイを読むことが好きです。過ぎさってしまいそうな人の気持ちや仕事こそ、解像度をあげて観察したいです。