震災から復興。そしてその先へ。

2016年9月13日

2日目の午前中、私たちは南相馬にあるソーラー・アグリーパークを訪れ、半谷さんに約2時間、お話をうかがうことができました。
 
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半谷栄寿さん
2010年6月まで東京電力の執行役員を務める。東日本大震災の後に福島の復興のために一般社団法人あすびと福島を立ち上げる。代表理事。
 

人材を育成して震災を乗り越える。

 
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半谷さんは2010年まで東京電力で働き、退職直後に東日本大震災を迎えます。
「みなさんのご家族や親せきの方に 直接的にも間接的にも迷惑をおかけしました。原子力の事故は私にも責任がある。」
半谷さんはそう謝りました。
 
現在、63歳の半谷さん。2011年から始めたあすびと福島の活動に熱心に取り組んでいらっしゃいます。今後の目標は福島の復興を担う人材「あすびと福島」を育成するためにあと30年、元気に前進することです。
 
半谷さん:
30 年という数字には理由があります。なるべく早くいろんな 事業をスタッフに任せたい。福島の本当の意味での復興には長 い時間がかかります。そして人材育成も結果が出るまで相当な時間がかかる。90歳までは自分の頭も働くんじゃないか、という希望も込めているんです。
 
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いくつになっても情熱を忘れない半谷さんの姿はとても魅力的でした。
そんな半谷さんには人材育成の法則がいくつかあるそうです。
小中学生向けのワークショップを行うときに大切にしていることは、躊躇せず発表すること。
 
半谷さん:
大人になればなる程、躊躇せずに自分の意見に自信を持つことって難しいんです。だからこそ子どものうちから自分の言葉で意見を発表してもらい、最後まで聞いてあげるようにしています。高校生には、志(目的)と手段を区別することを納得いくまで伝えています。たとえある手段がうまくいかなかったとしても、志は変えずにやり方を変える。失敗しても志を諦めてはいけないんです。
 
諦めずに志をやり遂げるには、「自分の好きなことをすること」、「それがどんなに小さくとも社会に新しい価値を生むこと」この2つがポイントです。
 
さらに周りの協力を得るためには、自分自身が謙虚で、誠実であることを意識しなければならない。そう半谷さんは語ります。
 

福島の想いを届けたい!

 
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原発事故によって大好きな福島が誤解されて悔しい、福島の想い、農家さんの想いを届けたい、という当時の高校生たちの志から生まれた「高校生が伝えるふくしま食べる通信」。
高校生が生産者を取材して情報誌を編集し、生産者が心を込めて作った農産物を一緒に会員に届けるというこの試みは、最初は会員200名からスタートしました。今では北海道から沖縄まで会員は850名ほどまで広がっています。
ここまで拡大した秘訣はなんなのでしょうか。
 
半谷さん:
信頼の回復をもたらすのは人と人とのコミュニケーションから始まる。じゃあどうやったら人と人との信頼に繋がったのかというと、失敗覚悟で実行したからですよ。
この情報誌の一番大切なことは経済効果の前に福島をありのままに見てもらう人を増やすこと。福島の農業回復という目的があって高校生たちが小さくても実行したから、目的に共感して、じゃあ自分も参加しようと思ってくれた人が増えたんだと思います。それが200名から850名になって、東邦銀行(福島県内を中心に展開している銀行)の120店舗に置いてもらったり、テレビで紹介されて、信頼関係が拡大していきました。
 
高校生たちの志が周りの人たちを動かしていく。その様子が半谷さんからのお話からも伝わってきます。
 

南相馬ソーラー・アグリパークに込められた想い。

 
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ここで南相馬ソーラー・アグリーパークの説明をしたいと思います。
 
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南相馬ソーラー・アグリパークという名前の通り太陽光発電も行っており、2016枚のソーラーパネルが約170軒分の電気を賄っています。日本で初の水力発電の体験装置もあり、水の力と自分の力を腕試しすることもできます。
なんと南相馬にいる3500人の小中学生のうち2200人がソーラーパークに様々な体験をしにやってきています!
小中学生だけでなく、県内の高校生と福島の復興事業を興したいと考え、「高校生が伝えるふくしま食べる通信」を生み出した高校生あすびと塾を毎月行っています。単に方法論を学ぶだけでなく、実際に社会的な復興事業を興す、というところまで高校生たちと一緒にやっていきたい、そんな半谷さんの想いが込められています。
 

——新たに立ち上げたトマトを育てる事業の志はどのようなものですか?

ソーラー・アグリパークから4kmほど離れた同じ南相馬市内に1.5ヘクタールのトマト菜園をオープンさせました。目指すのは農業経営者の育成です。農業って今、大きな転換点にあると思います。もっと消費者を意識した農業をやっていくかどうか。やれば日本の農業は伸びると僕は確信を持っている。頑張っている農家さんは育てているものへの愛情は素晴らしい、美味しいものを育てる技術も持ってる、あとは経営的な要素を持てばもう立派な経営者になれると思うんです。
 

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ここで作ったトマトは「あすびとトマト」と呼ばれ、明日の福島の農業を担う人たちが心を込めて作ったトマト、消費者の方が福島を応援したくなるトマト、そんな「あすびと」同士の縁を繋ぎたいという思いが込められています。

 
半谷さん:
あすびと福島が目指しているのは一人一人の人生が充実していると共に、延長線上に福島であれば復興、日本全国であれば新しい価値を創っていけるような仲間を増やしたいと考えています。
来てくれた子供たちには答えを与えるのではなく、子供たちが考え、行動しては間違えての試行錯誤を繰り返すことのできる場をつくります。
 
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福島の復興だけではなく、その先の日本の将来も考えておられる半谷さんの前向きな姿勢に私たちも勇気をもらいました。
震災を経験された半谷さんだからこそ、そして5年という月日がたったからこそ、このようなお話を聞くことができたのかもしれません。
 

半谷さんの素敵な格言集

 
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私たちは半谷さんからたくさんの人生に通じる法則を伝授させていただきました。
そんな言葉たちをここでいくつか紹介したいと思います。
 
「大切なことは、心を込めて大胆に、アバウトにやる。形が崩れても気にしない。大きさなんて気にしない。」
机のセットは1ミリまでこだわるという半谷さんですが、みんなで食べたベーコンを焼くときは大胆になるそうです。
 
「目的を決める→手段を決める→実行する、この繰り返しだね、我々の人生は。」
いつまでも素敵な目的を持ち続けていきたいですね!
 
「かっこいいディベートなんてしてほしいなんて思っていませんし、かっこいいプレゼンをすることが大切だなんて思っていませんよ。ただ自分の思っていることを率直に発言して躊躇しないってことが大切なんじゃないかと思います。発言に躊躇しない気持ちを私は発表する力だと思っています。」
ついつい発言する前に周りを気にして躊躇してしまいがち。ありのままの気持ちを伝えることが大切だと気づかされました。
 
ここで載せきれなかったものもここから見ることができます。
ぜひ読んでみて今後の参考にしてほしいです。
ユニークな法則がたくさんありますよ。
 
熱のこもった半谷さんの言葉は、復興だけでなく、私たちの生き方や人生についても共通点が多く、いつまでも情熱を持って生きていたいと思わせてくれました。
何事も諦めず、ぶれない志を持つ。いつまでも若々しい半谷さんの姿に私たちも胸を打たれました。
ぜひみなさんも南相馬を一度訪れて、元気をもらってほしいです。

セナ

映画と音楽とファッションと食べ物がすきです