【後編】Family History Lab.@SFC 「質問は『共通点を見つけたい』というサイン」

2016年8月3日

“編集”を紐解き、学んでいくシリーズ、今回は慶応義塾大学総合政策学部 (通称SFC)の清水唯一朗先生と、研究会の学生のみなさんと、「インタビュー」について学びます。
 
前編での、インタビューのコツや、質問を100個考える「100本ノック」を経て、いよいよインタビューを実践です!
インタビューとお喋りの違いは「目的があるかどうか」ではないかと話していましたが、それぞれのチームは一体どんな目的を持ってインタビューに挑戦したのでしょう。
前編はこちら>>【前編】Family History Lab. @SFC 「話し手が主役のインタビューとは?」
 
profile
 
清水唯一朗先生
慶應義塾大学総合政策学部准教授。‘99年に慶應義塾大学法学部政治学科を卒業し、政策研究大学院大学、東京大学でオーラルヒストリープ ロジェクトに携わる。’07よりSFCで教鞭をとり、多様な学生を輩出 してきた。’14年に米・ハーバード大へ留学、’15年には台湾・国立政治大学で客員准教授を務める。専門は日本政治外交、オーラルヒストリー。博士(法学)。
 

みんなはSFC生の何を明らかにする?いよいよインタビューにチャレンジ!

 
廣川(清水研の学生):ではさっそく、100本ノックで考えた質問から、インタビューしてみてください!
なお今回の時間は20分。「SFC生に聞きたいこと!」をテーマに100個質問を出してもらったけど、全部聞くことはできないよね。短い時間なので、より明らかにしたいことを確認して、質問を選んでくださいね。
 
GoogleやSNSでわかることではなく、対面でしか聞けないことを、なるべくオープンクエッションで聞いてみましょう!
質問する順番もイメージして、いざ挑んできてください!
 
慶應大学のキャンパス内に、それぞれ散らばっていきました。先輩のお気に入りの場所などに連れて行ってもらいます。
 
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インタビューを通じて何を感じた?「質問は『共通点を見つけたい』というサイン」

 
廣川:みなさん、おかえりなさい!どうでしたか?
 
参加者:ほんとに楽しかったです・・・!
 
廣川:さっきと全然みんなの表情が違う。(笑) ぜひインタビューを終えて、どんなことを感じたか教えてくれませんか?
 
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参加者:一つ一つの質問をぽんぽんとするんじゃなくて、テーマに沿って質問をつくることが大事だと思いました。そうじゃないと会話にならないし。会話のほうが和むから。
 
清水(清水唯一郎先生):会話になるとなんでいいのかな?
 
参加者:会話になっていると、話が広がると思います。
 
清水:うんうん。なるほど、つまり新しいことが聞けるということかな。
 
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参加者:自分が質問してる相手とか、共通点を見つけた時に、「私はこう思ったけどどう思った?」という質問をしてみました。
 
清水:共感してもらえると嬉しいよね。人間って不思議で、共通点を見つけると人は喜ぶ。質問は「共通点を見つけたい」というサインなのかもね。
 
参加者:(うなずく)
 
清水:ちなみに、あなたの前に質問した子の名前って覚えてる?
 
参加者:え…、あ…。汗
 
清水:ここで相手の名前を覚えていたら距離がグッと縮まるよね。笑
 
参加者:確かに!
 

清水:

引き出そう、引き出そうと思うより、「そうですよね」って共感した後のほうが、それこそ、ネットにないような情報を引き出せるんじゃないかな。
 

参加者:

共感したときの嬉しさはすごく分かります。でも、もし意見や価値観が違って、相手に「そうだよね〜。」と共感できなかったら、どう振る舞うのがいいですか?
 

伊賀(清水研の学生):

そこで共感できないということは、そこに自分と相手との違いがあるということなので、そこを深めていくといいかもしれませんね。
 

清水:

価値観に常に共感する必要はなくて、その人の話に関心をもつことが大切なんじゃないかな。相手に興味を持っていることが伝わることが大事。それはきっと表情一つでも分かるものです。
どれだけ嘘をついても、不思議と伝わってしまうものなんです。だから素直になるしかない。
 
参加者:ふむ・・・。
 
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参加者:

私は放送部に入っているので、インタビューはよくやっていたのですが、今回初めてインタビューが楽しいと感じられました(笑)
今まではどうしても番組づくりの過程として、やらなくてはいけなかったものだったので…。
 
伊賀:これからは放送部も楽しくなるといいね〜!
 
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参加者:インタビュー中に、相手の先輩が「今話していて気づいたんだけどね」と言ってくれて、相手にも新しい発見が生まれていると感じたことが本当に嬉しかったです。相手も質問に対しての答えを真剣に考えてくれていたのがよく分かりました。
 

駒井(清水研の学生):

僕は、彼女たちのチームにインタビューしてもらったのですが、質問を重ねるごとに「頷き」があって、そこで信頼や心地よさが生まれてきた気がします。一緒に会話をしているような。インタビューされているのにインタビューアーに学ばされることがとても多かったです。
 
廣川:なんだかゼミみたいになってきたね。笑
各々が自然と口を開く感じ、清水研はいつもこんな感じなんです。
 

SFC生を他己紹介!それぞれのインタビューの成果はいかに…?

 
廣川:では最後にまとめの発表をしてもらいます。ちょっと短いんですが、それぞれ1分でインタビューした相手のことを教えてください。
 
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“私たちは冨川理沙さんにインタビューをしました。冨川さんは今、大学4年生です。1年半前に授業でオーラルヒストリーを学び、1年前からこのゼミに所属しています。もともとは東京の中高一貫校に通っていましたが、沖縄が好きで高校から単身で沖縄の高校に進学。高校3年時にブルネイに行った経験からイスラム圏に興味を持ち、イスラム教徒と日本のつきあい方についてもっと勉強するためにSFCに入りました。
 
廣川:はい時間です!
 
参加者:ぎゃー短い・・・(涙)
 
廣川:実際に今の話を受けて冨川さんからコメントをお願いします。
 

冨川:

ありがとうございました!私も普段、インタビューする方が多いのでインタビューを受けることで学ばせてもらいました。
1点アドバイスをするならば、録音をしてくれたと思うんですけど、インタビューを始める前に「今から録音してもいいですか?」と一声をかけるといいと思いました!インタビューはそういう些細なことが、関係性、つまりインタビュー内容に影響してくるんです。
 
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“駒井さんはテニスがお上手で、慶應の代表として他大学との対抗試合に出ています。インタビューの研究に誇りを持っていて、他人への興味、自分とフィールドが違う人と話すことへの関心がすごく伝わってきて、尊敬できました。
 

駒井:

ありがとうございました。インタビューの時間は僕も本当に楽しめました!アドバイスをするとすれば、僕が話したことと、そこから感じたことの2種類を分けて伝えた方がいいと思います。
それからインタビューが終わったあとに「私はこう思ったんですけど…」という話をしてくれたんだけど、思ったことはインタビュー中に伝えてみたらいいと思いました!そうすると、お互いに影響し合えて、新たな発見が出来ることもありますよ!
 
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“廣川さんは共感力がある人だなと思いました。中学から高校になって変わっていく様子を聞いて、人が変われるってすごいことだなと、すごく尊敬をしました。

 

廣川:

発表ありがとうございました。
1個アドバイスするのであれば、聞いたことを正確に伝えることを意識してほしいなと思います。話し手の狙いとは違う伝わり方をしてしまうのは事実と異なる憶測を呼んでしまうので、一言加える工夫があるとさらに良いと思います!
 
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“伊賀さんは兵庫県の高校に通っていて、もっと自分の考え方を広げたいという考えから慶應を受験をしました。大学入学後の変化としては自分の意見を持って、それを言う必要があるか考えた上で意見するようになったそうです。

伊賀:

インタビューを始める時にこういうテーマで話を聞きたいと言われたのが、すごく明確で話しやすかったです。たぶん途中使えなくなってしまった質問があったと思うんだけど、そういう時も上手く切り替えられていたと思います。
フィードバックとしては発表ではそこで聞いたことを反映させて、プロフィールを省いてもよかったかもしれないね!ありがとうございました。
 
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“千葉さんには今までの人生の中で3つ大きな転機があり、1つは留学をしたこと、2つ目はAO入試がダメだったから1年間浪人をして一般入試でSFCに入学したこと、3つ目は大学を休学したことです。それらから転機を自分で作る力があると感じました。周りから吸収できて、思いついたことを実践できる方だと思いました。
 

千葉:

聞いていると、本当にいい人に聞こえてきますよね。汗
すごいなと思ったのは、質問への答えから共通点を見つけて、「こう思うんですけど、どうですか?」と質問をしてくれたことです。これはとても嬉しかったです。
ただ一つ言うならば、僕は浪人はしてないんですよ!笑
なので事実関係だけはしっかりと確認できるといいなと思いました!
 
参加者:(笑)
 
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インタビューを通じてつくりたいのは「10年後も続く関係性」

 
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廣川:

「話を聞く」という当たり前の行為を皆で考えていきましょう、ということを一番最初に言ったんですが、皆さんの考えは深まりましたか?最初はみんなの顔がどこか緊張していたけど、今はみんな笑ってくれているのでよかったです。笑
 
一同:(笑)
 

廣川:

インタビューって慣れてくると「いいことを質問しよう」とか、「相手の話を引き出そう」とついつい意気込んで、いい質問をしようと一生懸命になってしまうことがあります。でもそれじゃ、自分のためとか自分の自己顕示欲の為のインタビューだなあと相手にも伝わります。「そうなんですよね!分かります!」と言っていても目を見てしまえば、共感してくれているかどうか分かる。
だからこそ相手に心が向かっていない一方通行のインタビューではなく、10年後も相手と関係性が続くような信頼をつくれるような時間をとして、相手の話を聞いて欲しいなあと思います。
 
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清水:

僕たちは、知識はいろんな形で得ることができるし、知ることができる。でもね、そこですごく大事になってくることっていうのは例えば人の心にアプローチをしたりとか、人と向き合う時間を取ったりとか、そういうことなんです。
人に対する関心を持つというのは、自分の中でのすごく豊かな価値観を持っていないと持てないんだよね。皆はそれを持っているので、ぜひ使っていってほしいと思います。
 
さて、実は後ろにいる女性はうちのゼミの卒業生です。素敵なコミュニケーションを積み重ねていくと、あんな素敵な彼と出会うことができます。笑
 
一同:
 
清水:ぜひ何かコメントをくださいな。
 
青木:わ〜ありがとうございます。私は、SFCで初めて受けた授業が清水先生の授業だったんです。そこからずっと学びが繋がって、今があると思っています。
人の話を聞くってものすごく勇気がいるし、ものすごい自分と向き合うことだと思うけど、その積み重ねを大切に、皆さんも続けてみてください。
 
廣川:ありがとうございます!さて!次回第二回では、今日みんなで考えたインタビューを、みなさんの身近な大人、つまりお父さんやお母さんにしてみてもらいたいと思います。
身近すぎるからこそ、見えない姿や思いに出会えるかもしれません。
 
清水:家に帰ってきて、お父さん、お母さんは仕事で疲れているかもしれないよね。
そんな時にみなさんが普段していないような話をするだけで、きっとその一日は、全く違うものへと変わると思うし、そうやってインタビューは、みんなと相手との関係性を変えていきます。
 
つまり、インタビューは、みんなが、みんなの周りから変えていくということだと思います。周りから仲間をつくり、よい関係性をつくり、結果的にいろんなものを変えて、世の中を変えていく力になると僕は思っています。
 
では、第二回にむけて頑張ってきてください!
 
ということで、次回は実際に父や母へのインタビューを通じて、さらに考えていきたいと思います。

事務局・千葉雄登

この記事は高校生ではなく、僕が執筆させていただきました!/青春基地ウェブ運営部ディレクター・慶應義塾大学2年