地元の活性化を目指して

2016年7月22日

“被災地に笑顔を取り戻したい!”そのためにはじめたマイプロジェクト

 
13575554_291319047884316_45802040_o
 
被災地観光地化プロジェクトは私達を含め18名で活動しています。目的は「被災地に笑顔を取り戻す」ことです。東日本大震災の津波により1561haの広大な農地が海水に飲み込まれました。
 
そこで私たちはここに観光地を作り、農業で人を呼び込もうと考えました。植える作物は「あなたを救う」という花言葉を持つ蕎麦。もちろん、ただ蕎麦を植えても観光地にはなりません。私たちは仙台空港近くの農地に紅白の花が咲く蕎麦を播種し、世界初の飛行機から見える蕎麦アートを作りました。昨年度は両側の窓から見えるように面積を3倍にして、右側のハートの反対側に星を作ることにチャレンジ。しかし種を蒔こうとしたところで思わぬアクシデントに見舞われます。新たに貸してもらった農地は震災後初めて植える場所なので、大きな石がたくさんあり、耕す事すらできません。そこで、地元企業や友達にお願いをして、総勢60名で石拾いを行うところからスタートしました。無事種まきを終え、生育は順調に進みましたが、開花1ヶ月前、平成27年9月18日に関東・東北豪雨が発生しハートと星の圃場は5日間完全に水没してしまいます。その日から蕎麦は枯れ初めてしまいました。もうダメかと思いましたが、幸運にも星の圃場だけは1か月後に開花し、少しですが収量もあげることができ、綺麗な星の蕎麦アートが完成しました。
 

2度とあの悲劇を繰り返さないために、ARで震災を伝える。

 
13548989_291319527884268_907138849_o
 
蕎麦だけでは1年間を通しての観光地としては成り立ちません。そこで、年間を通じて被災地に人を呼ぶための仕掛けとしてARグラスを使った語り部ツアーをはじめました。語り部ツアー自体は四年前、先輩方がゴミ拾いをしている中で何台もの観光バスが目の前に止まりその光景を眺めていたことをきっかけに始まりました県外から来た観光客のみなさんにとっては家の基礎だけが残りその周りには今まで使われていたであろう生活用品がちらばっている光景は非日常であり、多くの方がその光景に驚きの声を上げていました。
時間が経つにつれて瓦礫の除去が進むと、言葉だけではその場で起こったことを伝えることが難しくなりました。そこでARグラスを用いることを考案します。ARグラスとはメガネのような形で、かけると映像をグラスの中に映し出し、その場所にいる感覚になれるツールです。ARグラスで震災当日や震災後9月頃の画像を見ることを可能にしたことで被災直後の状況をいつまでも語り継ぐことが可能になります。語り部ツアーをすることにより県外の人から地元の子供たちまで伝えていき二度と悲惨なことを起こさないようにしたいと思っています。
 

農業高校だからこそ、蕎麦打ちに挑戦。

 
新しいことを始めたいと想ったのと同時に、農業高校ならではのことをしたいと思った私は先生の呼びかけがきっかけで「そば打ち」に挑戦しました。なんとなく直感的に自分がしなければいけないと思ったからです。
練習を始め、地域住民の方に蕎麦うちを教えるという触れ合いを行ったものの、その時は上手く蕎麦を打つことができず、そば打ちの説明を行うだけで精一杯でした。けれども練習を重ねるうちに、蕎麦打ちそのものの楽しさはもちろんのこと、先輩たちと一緒に挑戦できることが楽しくなってきました。先輩と同じ空間にいると時間が楽しい、その一心で練習を続けました。10月のグリーンツーリズムの時はほとんど打てなかったのに、3月13日のイベントでは一人で1kgを打てるくらいまで上達することができました。
 

蕎麦打ちを通して気づく、被災した方々への偏見。

 
13582436_291320157884205_1278828326_o
 
収穫した蕎麦も無駄しないために、仮設住宅の皆さんに打ちたてのそばを100食振る舞うことも行っています。蕎麦打ちをしていると「私の息子も死んじゃった。今でも忘れないけど後ろばっかり向いてられないじゃん」と話してくれる被災者の方に出会いました。
私は何も言えず胸が痛くなりました。それまで私は震災のことは話さないよう、できるだけ避けていましたが、中には誰かに伝えたいという人もいるとこの時はじめて知りました。
 
蕎麦打ちの後にはみんな「来てくれてありがとう、美味しかったよ」と笑顔で言ってくれます。手打ちそば体験をした子供達が「このおそば自分で切ったんだ!上手にできたよ!」とお母さんに言っている様子や「楽しかった!ありがとう!」といった言葉をかけてもらう度に嬉しい気持ちになります。
今までは仮設住宅の人は「閉鎖的で、孤独な生活を送っている」という偏見を持っていました。もしかしたら私達は誤解していたのかもしれません。仮設住宅の人たちは凄く明るく、元気で優しく私達を受け入れてくれました。皆、悲しみをバネに前向きに生きるという想いを持っていたのです。その笑顔を見ると私達も元気になれました。だからこそ、復興のために頑張ることが出来るのだと思います。
お客様が食べて、美味しかったと笑顔で言ってもらえた時にとてもやりがいを感じます。これからも地元の活性化のために活動を続けていきたいです。