「昔はね、もっとにぎやかやったんよ。若い子ともよく一緒に話したもんだ。最近は、ようせんわい。なんも話さん。困ったたい。寂しいたい。」
この言葉が私のプロジェクトの原点です。
☞この記事は2016年1月に公開された記事を再掲したものです。
私は宮崎県北西部に位置する五ヶ瀬町で寮生活をして住んでいます。私は五ヶ瀬が大好きです。だから休日のたびに町内のおじいちゃん、おばあちゃんの家へ行き、手伝いをしたり、話を聞いたりという学生生活を送っています。
「おかえり、さぁさあがっていきなっせ。」
初対面の私にそう優しく声をかけてくれたおばあさん。中学1年生から地元を離れ、五ヶ瀬町にある全寮制の学校にある学校に入学した私は、ひどいホームシックに悩まされていました。そんなとき、道でであった初対面の私にかけてくれたこの言葉に、私はこの上ない暖かさを感じ、五ヶ瀬町のことが大好きになりました。以来、休日はいつも町内のいろんなおじいちゃん、おばあちゃんの家にいるようになりました。
ある日、「じいさんが死んでからは不便なことが多くなってね、家のなかでもほとんど動かなくなったね。」とふと言われました。そこで高いところに届くような踏み台を作ってみたら、おばあさんが「ありがとう、ありがとう。久しぶりに煮しめでもつくってみようかね。」とすごく明るくなってくれたんです。私はそれが嬉しくて、五ヶ瀬のお年寄りの根底にある悩みをなんとかして解決したいと思うようになっていきました。
そこでお年寄りが今の五ヶ瀬町に対してどのような意見を持っているかを、町内のフィールドワークを通して探っていくことにしました。すると「昔の五ヶ瀬はもっとにぎやか、若者もたくさんおった」と口をそろえて言います。若者と話をせず、寂しい思いをしている孤独なお年寄りが増えているということがフィールドワークから分かってきました。
お年寄りに寂しい思いをさせないために、キーワードは「地域の宝物探し」
私が立ち上げたプロジェクト、それが「ひむかのくにプロジェクト」です。若者とお年寄りが交流する機会をつくるためには、まずは若者が地域に出ることから始めようと思いました。それは同時に、地域に若者が出やすい環境をつくる必要も出てきます。そこで私はこのマイプロジェクトを立ち上げ、19名の仲間たちとともに今日まで活動を続けてきました。そのほとんどが高校生で、SNSでの呼びかけで集まったメンバーです。
具体的には、まずは町内フィールドワークを行います。「普段は何気なく通っている道にもこんな宝物があるんだ。」という発見を大事に、そしてこの発見をマップにしていきます。そしてそれを校内へ掲示しました。校内に掲示することで多くの高校生の目に触れ、地域に出ようというきっかけになるのではないかと考えたからです。実際、校内に掲示したことで参加してくれた子や、それをきっかけにお年寄りとの交流を始めた人がいたのはとても嬉しいことでした。また町内の大きなイベントの中で、「ひむかのくにプロジェクト」の一環として地域の宝物探しゲームを開催し、五ヶ瀬町の子どもたちを対象とした活動も行いました。
しかし結果はどれもうまくいきません。
事後アンケートでは、「地域に出て何のメリットがあるのか具体的に見えてこない。」といった意見や「五ヶ瀬町には不安しか感じない。将来この地に残ろうとは思えない」などといった声が見受けられました。そこから見えてきたのは、若者は将来に対する不安から、五ヶ瀬町に対する思いがネガティブな方向に働き、五ヶ瀬町に対する興味関心が薄れていくということです。
一度チャレンジしたから見えてきた、新たなプロジェクトの立ち上げへ
そこで私は、「若者×お年寄り」の学校というプロジェクトを新たにはじめています。
若者の問題を解決するためには、お年寄りの長年の経験が必要だと思っています。同時に、お年寄りの問題を解決するのに若者の存在は必要不可欠なものです。そこでお互いをつなげて、学校という場で活動を起こそうという仮説に辿り着きます。
実際に現在進行中であるこのプログラムでは、お年寄りと若者が同じ教室で人生について学んでいきます。将来に不安を抱える若者の意見を聞き、お年寄りがアドバイスをするというものです。今後は週2回ほどの開催を行い、未来の五ヶ瀬町について考えるワークショップも行い、その中で出た意見をポスター化し、町内に掲示していこうと考えていきます。