鎌田安里紗さん(23)
:10代から「ありちゃん」と呼ばれる人気のファッションモデル。
2009年から4年間雑誌『Ranzuki』で専属モデルを務める。2011年慶應義塾大学総合政策学部に入学し、現在は大学院に進学しながらモデル活動を続ける。途上国支援活動・貧困問題に関心を持ち、エシカルファッションを広めるなど積極的に活動している。
——もっと、おしゃれになりたいです!ありちゃん流の服の着回し術を教えてください!
ありちゃん(以下あ):服というより、小物の使い方かな!
小物の素材やかたち、色の工夫で印象ってぜんぜん違ってくるよ。
どんなネックレスにするのか、靴もスニーカーか革でも全然違うし、ベルトの使い方でも変わるよ。
みんなは普段どういう服を買うの?
編:部活があるとジャージで過ごしちゃうからあまり買わないです。(笑) あと買っても安いものを選ぶことが多いです。
あ:高校生だったらそうだよね!!これがまさに、私がいつも伝えたいことに繋がる話なんだけど…。
モノを買うとき安ければ安いほどいいと思いがちだけど、「安い」ということは何か理由があるはずだよね。モノをつくる人に払うお金が少ないのかもしれないし、環境に負担がかかるつくりかたをしているかもしれない。安いモノが全て悪いわけではないけれど、ものづくりのウラガワをイメージする想像力は必要だよね。
あと、安い服だと「着るか着ないかわからないけどとりあえず買っちゃおう!」って気持ちにもなるよね。例えばTシャツ1枚つくるのに、どれくらいの水を使うと思う?
編:うーーん。
あ:2900ℓもなんだよ! (※バスタブがだいたい200ℓなので、15回分くらい。)
編:えええ!そんなに必要なんですね…。
あ:びっくりするよね!
「まぁまぁかわいいくらいだけど、安いからいいや!」って買って、結局全然着ない服とかってあるよね。
編:それって、たしかにもったいないかも…。
あ:そうやって服ができるまでの過去と買ってから捨てるまでの未来も含めてファッションを楽しむ「エシカルファッション」をもっとみんなに知ってほしくていろんなメッセージを届けているの。環境や人に負担をかけないものづくりはコストがかかるから、少し値段は高いけど、それだけ素材や生産がきちんとしてるってこと。買うときにも心がこもるから、長く使えるんだよね。
——高校に進学するために東京へ出てきたって本当ですか?
あ:そうそう。(笑)
中2のころから派手なファッションをしはじめたんだけど、でも同時に勉強することも好きだったんだよね。派手な格好はファッションとして好きなだけなのに、見た目だけでヤンキーっていうカテゴリーに入れられるのが、すごくすごく嫌だった。だから「高校は自由な校風で、勉強もできるところに絶対行く!」って決めていて、茶髪の生徒が映っている高校をホームページでひたすら探したんだよね。(笑) 中学生まで住んでいた徳島にはなくて、たまたま東京にあったから上京したの。
編:東京は一人暮らしですか!?親に反対されなかったんですか?
あ:もちろん心配されたけど、どうしても行きたかったから3ヶ月くらい毎日伝え続けたら、そんなに心が決まってるなら、と応援してくれました。
——モデルの仕事を始めたきっかけを教えてください!
あ:渋谷を歩いてたら109の前で声をかけられる、っていうありがちなやつだよ(笑)『Ranzuki』という好きな雑誌に載れるなんて嬉しい!と思ってはじめました。
編:すごい!!
あ:でもモデルの仕事より勉強を優先させるということは決めていたから、「大学受験の前に勉強に集中するためにやめます。」って編集長に伝えたこともある。
でも「休んでもいいからたまに続けてみたら?」って言ってくれて、結果今日までモデルのお仕事をしています。
編:勉強を優先させることに迷いはありませんでしたか?
あ:芸能の仕事をするために東京に来たわけじゃない、ということがはっきりしていたから全然だなあ。
編:かっこいい…。逆にモデルのお仕事を続けよう!と思えた理由はなんですか?(質問攻め。)
あ:高2のとき「フェアトレード」について初めて知ったんです。
安い製品って発展途上国の人件費や原料などがすごく安い価格で取引されているから可能なんだけど、フェアトレードは、そんな立場の弱い人たちにもフェアに、彼らの仕事を支援しながら作られたもののことを言うの。
こんなことを、どうしたら興味のない子たちに伝えられるだろうって。
それで、モデルの仕事を続ければ、ファッションを通じて、洋服が好きな中高生とか若い子たちにも、社会の課題や気付いていない世界の姿を伝えられるんじゃないかって思ったの。
これからも、私自身がモデルというメディアになって、情報発信をしていきたいなあと思っています。
——ありちゃんはいつ「発展途上国」に興味をもったんですか?
あ:14歳のころ、インドネシアのバリ島に訪れたときだよ。みんなバリ島ってどんなイメージがある?
編:きれいなビーチとか!リゾート地って感じです。
あ:そうそう、私もそんなイメージを持ってたんだよね。そのイメージに憧れて、自分で父親にお願いして旅行に行ったの。
でも空港に着いて出国ゲートを出た途端たくさん人が集まってきて、何かと思ったら「お金ちょうだい。」って。ちょっとしたトラウマになるくらい怖かった。
何も知らずに遊びに行って、そこには私が思っていた当たり前の生活ができていない人がたくさんいることに衝撃をうけたんだよね。
当時は勝手に自分と比べたりして、かわいそうだなって思ってたなあ。
編:今は違うんですか?
あ:食べ物がなくて生きていけないとか、きれいな水が飲めないとか、学校に行けないとか、そんな最低限のことは変えてかないといけないと思っている。
でも全ての国や人が、今の先進国みたいになれば幸せになるわけじゃないと思うんだよね。
むしろ先進国の生き方にも無理があるから、今たくさんの課題が生まれていると思う。
それから今もいろんな国に行くけれど、現地の生活を全力で楽しむことにしています。
そのせいでお腹も随分壊したけど…。(笑) 国によって時間の使い方も文化も生活も、日々の楽しみ方も全然違うのが面白いなあって思う。
——では、発展途上国での慈善活動をしてから自分や自分の周りでの変化は起きましたか?
あ:初めて自分のブログで社会の課題について書いたとき、想像以上に反響があったんだよね。みんな知らないだけで、関心があるんだなあって思った。
編:今はどんな活動をしていますか?
あ:自分でスタディーツアーを企画して、若い子たちと途上国に連れて行って、一緒に遊んだり、フェアトレードの洋服を作っている人に会いに行ったりしてるよ。
——最後に、これを読む高校生へメッセージをください!
あ:自分が何をしたいかを考え、小さなアクションでいいからすぐ行動すること!
自分には何ができるか、じゃなくてやってみることが大事だと思うよ。
例えば私はデザインが苦手なんだけど、決めつけちゃうと一生できないから、絵を描ことに最近挑戦してるよ。
編:なんでもトライすること、ですね!
あ:日々起こっているいろんな出来事も、後から見ると実は繋がっていることってあると思う。
大切なのは、私らしくないからやらない、とか自分はこういう人だからできないと決めつけないこと!
編:私たち10代が今、できることは何ですか?
あ:いま社会にはたくさんの課題があって、いろんな人がそれぞれに解決に向けて頑張っているよね。
そんな中で自分ができることなんてぜんぜんないって思っちゃうことも多いと思う。
「社会」って聞くと、社会の外に自分がいる気がするかもしれないけど、実際は社会の中に自分がいて、自分が少しでも変わることで社会を少しでも変えることができるんだよね。
私も、自分で決めてやり始めてみたら、意外と周りに味方がいることに気付いたから自信をもって取り組むことができたんです。
だから何でもやってみることをオススメします!やれば、きっと少しずつ自分も周りも社会も変わっていくよ!
?<#TBTシリーズ>この記事は2016年1月6日に公開された記事を再掲したものです。