主演女優・のんさん登場!大ヒット映画「この世界の片隅に」特別上映会&トークライブ

2016年12月19日

12月4日、青春基地では映画「この世界の片隅に」の特別上映会を開催しました!
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現在上映中のこの作品に出てくる主人公「北條すず」さんは当時18歳の女の子。彼女と同世代の10代に作品をみてほしいという想いで、特別上映会が実現しました。
 
そして!!
上映後には、主人公・すずさんの声優を務めたのんさんが駆けつけてくださいました!
 

たとえ戦争中の物語でも、「嬉しい」という感情や「美味しい」という感覚は変わらない。

 

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ゲスト・のんさん:1993年生まれ、女優。
司会・今村久美さん:認定NPOカタリバ代表理事。2009年内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。中央教育審議会教育課程企画特別部会委員など。
 
今村: NPOカタリバの代表をしています、今村が司会を務めさせていただきます。
 
のん:みなさんこんにちは。すずさんの声をやらせていただきました、今日はよろしくお願いいたします!
 

——この作品は監督からお声がけがあったんですか?

 
のん:監督から「オーディションにきてくださいませんか」とお声がけいただきました。
決まったときはすごく嬉しかったです!お話がきてから原作を読んで、映像を拝見したのですが、素晴らしい作品だなと思ったんです!これから役者をやって行く上で出会えないかもしれないというくらい素晴らしい作品だと思いました。
 
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会場の高校生たちから、次々質問が上がります。
 

——年齢の近い「すずさん」を演じるときに、大変だったことを教えてください。

 
のん:すずさんは18歳でお嫁にいくのですが、この時代では当たり前なんです。若くして、しかも知らない人に嫁ぐ、その感覚を掴むことが大変でした。
 
今村:早朝に起きて井戸まで水を汲みにいくシーンも、今の時代ではありえませんよね。日常を演じるために、工夫したことはありますか?
 
のん:全部、LINEで監督に聞きまくってました。(笑)
質問を箇条書きにして送るんです。
 
一同:(笑)
 
のん:細かく丁寧に教えてくれました。監督はこの作品の制作に、6年間もかけているんです。
 

——映画を見ていて、すずさんと、のんさんの雰囲気が似ているように感じました。のんさんは似ていると感じますか!

 
のん:わたしもぼーっとしているとはよく言われますね(笑) あとは集中すると周りが見えなくなるし、おっちょこちょいで…。
 
今村:お話していて、時々のんさんとすずさんが重なって、どちらか分からなくなる錯覚があります。
 
のん:違うなあ、と感じるのは、家事を楽しそうにするところです。わたしは洗濯物を溜め込んじゃうし、料理するのもめんどくさいと感じてしまうので。(笑)
でもこの作品に出会ってから、わたしも料理が少しだけ楽しく、生活しているときの自分が誇らしくなりました。
 
今村:他にすずさんから学んだことは何かありましたか?
 
のん:なんだろう・・・!自分で「もんぺ」をつくってみたんです!
 
今村:すごいですね!
 
のん:映画のなかで、すずさんが着物を切って「もんぺ」にリサイクルするシーンがありますよね。この作品の映像だけを参考に作ってみたんですが、出来ました!みなさんもぜひ!
 
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——戦争に関する物語で声優をされるということで、何か心がけたことはありましたか?

 
のん:戦争に関することは、今まで目を向けてこなかった部分があったんです。非日常で、得体が知れなくて、自分が住んでいる世界とまったく別の話のように思っていて、知りたくない気持ちがあったんです。
 
でも、この作品に出会って、得体の知れなさはなくなりました。その時代に生きていた人たちの感情や、家族でごはんを食べて「幸せ!」と感じる感覚は、今生きる自分達と変わりませんよね。
そう思えると、映画の中の出来事を自分に引きつけて考えられるようになります。もっと直接的な部分で恐怖を感じたり、助け合う事の重要さを感じます。
 

「自分の信じることに突き進んで!」10代へのメッセージ

 
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——映画の後半、すずさんの「みんなはよかった、よかったと言うけれど、どこがいいの?」というセリフに、はっとしました。のんさんが個人的にはっとしたセリフはありましたか?

 
のん:水原さんがすずに言う「まともにおってくれ、普通でいてくれ」って言葉にはっとしましたし、グッときました。
 
今村:「まともでいてくれ」ってすごく強い願いなのかもしれないですね。私は、すずさんの「ありゃー」とか「ほうですかあ」と感情表現するセリフが印象的でした。
 
のん:「ほうですか」、いいですよね!
 

——「この世界の片隅に」って素敵なタイトルだと思うのですが、のんさんは最初このタイトルを耳にした時どんなことを思い浮かべましたか?

 
のん:戦時下の作品と聞いていたので、意外でしたね。読んでみると、日常の暮らしが丁寧に描かれていて衝撃を受けました。そしてそれがとても楽しくすずさんが可愛くて、絶対わたしがやりたいと思いました。
 
それから、この間、初めて舞台である呉に伺ったのですが、前方を海、周りは山に囲まれていて、ここは「世界の片隅」にあるんだ、と感じる景色が広がっていました。すずさんはこの場所で生きていたんだな、とすごく納得して、嬉しくなりました。
 
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——今日、東北から来ました。のんさんが出演される作品は、日本の辛い時期を描くことが多いと感じています。そんな時代や人から学ぶことはありますか?

 
のん:「日々を暮らす」という当たり前のことに、すごく面白いことが転がっていたり、幸せがたくさん詰まっていることを感じました。どんなことがあっても毎日が巡ってくるって、とても愛おしいことだなと。
 
今村:今回、のんさんが演じられてくれたことで、戦争と自分との距離がぐっと縮まったように思います。
 
のん:原作者のこうの史代先生が、「戦後に生き残った人たちが、今をつくっているんだ」と、それはすごく力強いことですよね。私たちが生きているこの世界で起きたことなのだと、改めて思いしました。
 
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——映画の中で、後半になるにつれて、より感情的になるすずさんがいたように感じました。そういう感情を、現実の生活でもひきずることはあるんですか?

 
のん:わたしは、きっぱりしていると言うか、切り替えが早いんです。だから、引きずることはありませんでした。
 

——「声だけ」で演じるにあたって、気をつけたことがあれば教えてください!

 
のん:普段は身体表現や表情を使って演技する事が多いので、声だけで表現するという事が、すごく難しかったです。すでに描かれている映像に、声をのせていく。リハーサルのとき、中々上手くいかなくて「あーこのままだと降ろされる!!」と焦ったくらいです。(笑)
 
今村:最後に女子高生のみんなに、アドバイスをください!
 
のん:自分の信じることに突き進むことは、とても素敵だと思います。18歳でその先のことが全て決まるというわけではないと思うので、明るく、楽しく、いきたいですよね!
でもムカつくことも発散して、自分の感情に素直に突っ走ってほしいなと思います!
 
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事務局・千葉雄登

この記事は高校生ではなく、僕が執筆させていただきました!/青春基地ウェブ運営部ディレクター・慶應義塾大学2年

石黒和己(いしぐろ わこ)

NPO法人青春基地・代表理事/1994年愛知県生まれ。映画やエッセイを読むことが好きです。過ぎさってしまいそうな人の気持ちや仕事こそ、解像度をあげて観察したいです。