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僕が見つけた“選挙権を手に入れること”の答え-NPO法人僕らの一歩が日本を変える。 小林毅大(17)

2016年7月8日

学校の模擬選挙で学んだ”選挙権を手に入れる”ということ

 
こんにちは。NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」運営の小林毅大です。現在17歳の高校2年生ですが、NPOに所属して全国の中学高校での”票育”授業を行うなど、若者と政治をつなげることを目標に活動しています!
そんな僕は現在千葉県の中高一貫校に中学生の時から通っており、そこでは政治教育の一環として“模擬選挙”を行っています。今、いろいろな学校で開催されている”模擬選挙”の授業ですが、この学校の模擬選挙授業で僕が感じた”選挙権を手に入れること”について書きたいと思います。
☞この記事は2016年1月1日に公開された記事を再掲したものです。
 
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僕が通っている学校では、衆議院・参議院の選挙が全国で行われると実際に13歳の中学一年生から18歳の高校3年生が、選挙期間中に校内に設置された投票所で模擬投票を行います。学校の中で”選挙権を手に入れ”、一票の権利をもつのです。選挙期間中は昇降口に各政党のポスターがずらっと掲示され、一気に学校は選挙ムードに。
「じいちゃんばあちゃんが『次世代の党(現 日本のこころを大切にする党)』ってなんか変じゃね?」
「『生活の党と山本太郎となかまたち』って名前長すぎだろ(笑)」
「嵐が選挙にでたら絶対投票するのに!!」
ポスターを見た生徒から、いろいろな意見が学校にあふれています。
学校で行う模擬選挙の特徴は、2つあります。
1つ目に投票率が高いということです。投票所が校内という近い場所にあり、投票する時間もあるという環境ですが、毎回投票率は70パーセントを切りません。
2つ目に投票結果が実際の投票結果と非常に似ているということです。
一番最近の2014年12月の衆議院選挙では、自民党の票数が過半数をとり、票数の割合が実際の結果と似ているように感じました。
 

学校の模擬選挙で感じている違和感

 
僕が中学一年生から学校の模擬選挙に参加していて感じている違和感は、みんながこの選挙に対して実は積極的ではないということです。投票を「義務」という形でとらえてしまっている人が多いと感じています。
学校で行う模擬選挙の投票率は高く、僕らの中で選挙期間中に政治の話題が出ることがありますが、あくまでそれは、学校の勉強に関する話題の1つでしかありません。
「数学のこの問題ってどうやって解くの?」とか「今度の英単語テストの範囲ってどこまでだっけ?」などの会話と同じ意味合いしか持たないのです。学校の模擬選挙だけで本当に政治や選挙への関心は高まるのか。僕はいつも違和感を感じています。
 

票育は新しい可能性を秘めている

 
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現在僕の所属するNPO法人僕らの一歩が日本を変える。では、全国の中学高校で票育と称した政治教育の授業を行っています。「票育」では、政治について考えることを学校の中にとどめることなく、自分たちの生活や住んでいる地域、社会にまで範囲を広げた政治教育を行っています。
学校の模擬選挙との違い、それは実際の選挙に即した模擬選挙ではないということです。政治に興味のない中高生が実際の選挙に即した模擬選挙をしても、積極的になれずになんとなく参加してしまうのではないでしょうか。
票育で行う模擬選挙は、自分たちの住んでいる地元を舞台にした架空の選挙です。授業の題材はヒアリングやフィールドワークが元になっています。その地域でしかできない、地域に密着した授業をつくっています。そして、その授業を僕たち自身が教室に届けるのです。票育授業で、ぼくいちのスタッフが演じる候補者は、みんな地元の住民のように最近の地域の問題について話したり、ディスカッションの際には、パソコンを用いて「税金で買われているものをなくしたら町がどうなるか?」を視覚化したりしています。
何度も学校に足を運ぶなかで、気づいたことがあります。
それは政治は、誰かに考えろと言われて考えるものではなく、僕たちの中に常に存在する個人的な問題であるものだということです。その個人的な問いに対して「権利」という形で意見表明をすることが選挙権を手に入れるということだと考えています。
 

本当に意味のある投票をするために

 
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本当に意味のある投票をするために必要なのは、まずは先ほど述べた個人的なテーマに気付くことです。
「地方自治体の財政問題」と聞けば、近年どのくらいの人口が都市部に流出していて、国からどのくらいの額のどんな補助金をもらっているのか、など僕たちに程遠いような話し合いが政治では行われています。でも、僕たちに必要なのは、それらから逃げることなく「どんな街に住みたいかを考える」ことではないでしょうか。
同様に「少子高齢化」と聞けば、出生率の近年の変化や海外の先進国との比較、現在国が行っている政策なども話し合われますが、やっぱりどこか遠い。でも、そこから逃げることなく「子供がいなくなったらぼくたちの生活は将来どう変わってしまうのかを考える」ことが必要なのではないでしょうか。
 
僕の最近の個人的なテーマは、「死刑制度を廃止すべきか?」です。日本以外の先進国では死刑がある国はほとんどなく、人道的な立場から世界的に否定されている傾向にありますが、今以上の数の囚人を日本の刑務所に収容することは厳しい、死刑がなくなると結果的に使われる税金が増えてしまうといった点から反対されています。僕はこの問題に「人を殺してはいけないが、罪人ならば殺してもよいのか?」という個人的な問いを見出しました。
 
つまり僕が思う本当の政治教育とは、若者が自分たちの住む社会にどんな問題があって、将来どうなるのかに気付き、その上でどんな人間になり生活したいかということを考えることです。専門的な知識を吸収することではありません。
多くの場合で、一つのニュースには様々な情報が含まれています。しかし大事なことは、そこから「このニュースで本当に問題になっていることは何か?」ということを考えることです。そのためには票育のような取り組みはもちろんのこと、普段目にするテレビのニュースや新聞の記事、ネットニュースなどの見方を変えることが必要です。先ほどの僕の死刑制度から導き出した問いのように、まず「自分ならどう考えるか」を見つけることが始まりです。
そしてその問題に自分なりの答えを見出した人たちによって投じられる一票こそ、本当に意味のある一票なのかもしれません。それこそが”選挙権を手に入れる”ことだと思います。場合によっては、自分の思う社会がどの政党・候補者と合わないと感じたら、白票や無投票をするということもありだと僕は思います。投票をするという行為そのものではなく、どのような思考のプロセスをたどって投票に行きつくかが大事なのではないでしょうか。
自分のことや社会のことをたくさん考えた高校生の票が投じられる来年の参議院選挙が楽しみです。

たけひろ(寄稿者)

千葉県の高校3年生。学校では生徒会長を務めながら、NPO法人『僕らの一歩が日本を変える。』で活動中。「考えることから逃げない」と決め、大学は哲学科志望。サカナクションと三島由紀夫が好きで、ジジイになっても社会の最前線で動いてる人間を目指している。(コラム執筆者)