部長として決めたのは「文化祭をゴールにしないこと」立教池袋高校・数理研究部

2017年1月25日

数理研究部って一体どんな部活?

 

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数理研究部は、1971年に愛好会として発足してから今年で45周年を迎えました。発足時は14名という少ない人数で数学を自由に探究するところからはじまり、1980年代にコンピュータが導入されてからは、言語を学習することによるコンテンツ制作が開始されるとともに部員数も増え、数学や情報工学に関する大会にも参加するようになりました。21世紀になると、その規模と団結力を活かして、ルーツである数学分野では数学選手権(現:数学甲子園)準優勝、情報工学分野ではIT・簿記選手権における優勝・IVRCにおける金賞受賞・コンテンツのLaval Virtual(フランス)における採択などの実績を残し、そして、新たに参戦するようになった経済学分野では日経ストックリーグで毎年全国入選を果たしたほか、これまでに5回賞をいただきました。
 

先輩が後輩を教える”数学班”

 
数理研究部の活動は、主に数学の学習・プログラミングの学習・日経ストックリーグ参戦に向けた調査です。数学に関しては、“数学班”として先輩が後輩を教えるシステムを確立した小規模の塾のようなものを開いています。この部活の最大の特徴は、ただひたすら先輩が一方的に教えるのではなく、ときどき自分だけでは解決できない問題を持ち込んで後輩と共にアイデアを共有しながら学ぶという点にあります。後輩が先輩より先に解法を思いついて解説するという場面も少なくありません。プログラミングの学習においては、一人で黙々と独習するというよりは、むしろ2人以上のグループになって一つの言語を勉強していきます。このような協力の姿勢が、大会実績にもつながっているのではないでしょうか。日経ストックリーグに向けた調査では、チームごとに自分たちの好きなテーマ、もしくは身近なテーマを設定し、日々情報の収集を行いつつ株式投資との関連を模索しています。最終的にはレポートを作成することになりますが、ここでは特に収集した情報の使い方と論理的構成力および説得力に重きを置いて取り組んでいます。
 
数理研究部の誇る“良さ”は、独自に築き上げてきた部員同士の関係性であると思います。先輩後輩といえども、そこに上下関係の壁はありません。互いに敬意を払いつつ、互いの長所と短所を踏まえたうえでプロジェクトを良い方向へと進めていく強さがあります。
 

テーマは”魅せる”展示

 
数理研究部では、毎年“見せる”だけではなく“魅せる”展示を伝統的に守りつづけています。私たちのルーツである数学と言う学問が重んじるテーマには、“正確に論理立てて伝える”というものがあると考えています。そして、それは数理研究部が守りつづけ、追い求める展示のスタイルやテーマに通じるものがあります。現在はゲーム制作からVRコンテンツの制作、そして経済学分野における調査というように幅広く学ぶ部活動となりましたが、伝統として守り続けているテーマと原点である数学を重んじる体制が失われることのないように部長として部員をまとめるのはとても大変でした。
しかしながら、得るものはとても多かったとも考えます。何かを企画して、それをチームで完成へと導くのはなによりも楽しいことですし、文化祭当日にお客様からさまざまな評価をいただくと、その良し悪しにかかわらず作り上げたことに意味があるのだと実感できるからです。数理研究部は毎年、立教池袋中学校・高等学校の文化祭で選出される“展示大賞”を獲得していて、今年度部長を任された私にとっては非常に大きなプレッシャーであったのですが、文化祭最終日の閉会式で壇上に呼ばれ賞をいただけたときの喜びは何物にも代えがたいものであったと思います。
 

”文化祭をゴールにしない”部長として決めたこと

 

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部長として一番意識してきたことは、その一年の活動において“文化祭をゴールにしない”ということです。これは、昨年度数理研究部の部長をつとめた先輩の言葉から生まれた理念であり、文化祭で自分の作品を見て・体験してもらったからそれで終わりであるとか、文化祭が終われば気が抜けてしまうといったことでは駄目で、あくまでも文化祭をゴールとするのではなく、むしろスタートであると考えて改めてチューンアップに励むというものです。私はこの理念を踏まえて、文化祭をゴールにしないということを踏襲しつつ、これをゲームのようにいえば“チェックポイント”としてとらえて積み重ねの努力を欠かさないということを一番意識してきたと思います。
一番苦労したことといえば、私は先ほど説明した数学班で数学を教えているのですが、単元末に行っているテストを作成することです。部活の運営に関しては特に苦労という苦労はなかったのですが、この小規模な数学の“学び舎”では、私はいわば先生なので、後輩の苦手な点や伸ばしたい点を意識しつつカリキュラムを組んだりテキストを作成したりしなければなりませんでした。しかし、苦労したとはいっても、私自身数学が好きなので、楽しんでいた側面も否定はできませんが。笑
 
大切なのは”あらゆる学問への敬意を払い続けること”
 
私の将来の夢は、数学者です。幼少期よりさまざまな本をひたすらに読んできましたが、なかでも興味を持ったのが数学でしたし、一見使い道のなさそうな理論に活路を見出すところに魅力を感じました。
最後になりますが、同じ部活をしている全国の高校生のみなさんへのメッセージを綴ろうと思います。私たちは、いわゆる“理系の部活”として日々活動していますが、それでも忘れてはいけないのが、“あらゆる学問への敬意”であると思います。理系だから文系の分野は嫌いであるとか、これは非科学的で論理的でないから無意味であるとか、そういった考えを持つのではなく、むしろ“理系と相容れないから興味深い”“非科学的で論理的でないから探究する余地と価値がある”とあらゆる学問分野の融合を志す学習を大切にするべきだと私は考えています。ぜひ、“非科学的な科学”をこれからも楽しんでいきましょう。
 

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